「浜田雅功さんも“俳句なんてつまんねー”と思っていたはず」 56歳でブレイクした夏井先生が明かす、俳句に捧げた人生
全3回の第1回
還暦過ぎたら余生は隠居? いやいや、齢(よわい)60前後=アラ還で世に出る形になった人もいる。俳人の夏井いつきさん(68)、紅白歌手の秋元順子さん(78)、映画監督で作家の松井久子さん(79)。ノンフィクション・ライターの西所正道氏が三人の「花開くまで」をつづる。
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NHK連続テレビ小説「あんぱん」もいよいよ大団円を迎えたが、「アンパンマン」の原作者やなせたかしさんが、テレビアニメ「それいけ! アンパンマン」でブレイクしたのは69歳の時だった。
やなせさんは著書『絶望の隣は希望です!』の中で、人生を満員電車になぞらえて、こう記している。
〈ぎゅうぎゅう詰めの満員電車は嫌だ、もう耐えられないと降りてしまったら、それでおしまい〉〈諦めないで、ひとつのことを思いを込めてやり続けていると、ちゃんと席が空いて出番はやってくるのです〉
「還暦」が近づくと、自分は果たして「席」に座れるのかと不安になるが、60歳前後の「アラ還」からグイグイ世に出てブレイクした人はどんな歩みを経てきたのか。三人の“アラ還ブレイカー”に話を聞いた。
“俳人になります”と学校を退職
まずは、56歳の時「プレバト!!」(TBS系)に出演しブレイクした俳人の夏井いつきさんだ。
夏井さんといえば、俳句の前ではみな平等とばかりに、名だたるゲストの俳句であろうと「才能ナシ」などと評し、遠慮なく添削する。その小気味よさと解説の分かりやすさで俳句ファンは確実に増えた。
そもそも夏井さんが俳句にのめり込んだきっかけは、中学教師時代に書店で手に取った黒田杏子(ももこ)さんの句集。中でも〈昼休みみじかくて草青みたり〉という句は、昼休みの時間もないぐらい仕事にてんてこ舞いする夏井さんの気持ちに刺さった。
「俳句って見聞きしたり感じたりしたことを、季語を媒介に真空パックしたもの。それが読者の持つカギで解凍されて五感に飛び込む。俳句という文芸の本質に気付かされました」
黒田さんの弟子になると勝手に決めて、彼女が選者の雑誌に投句を始める。最初の投句で選評が付き「よっしゃー!」と歓喜し作句を続けていたが、30歳の時、家庭の事情で教師を辞めざるを得なくなる。その際、学校に伝えた退職の理由が“俳人になります”。
「教師は大好きな仕事だったから、自分を納得させようとたんかを切ったんです」
ひょうたんから駒というが、教師への未練を断ち切るために口にした言葉が現実になるのだから人生は面白い。子育てや介護、家事の傍ら投句し、句会にも行き腕を磨いた。
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