「人間いうのはな、死んだ時に初めて値打ちがわかるんや」 不世出の芸人「横山やすし」が息子に語っていた“口癖”

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葬儀の場で意外なことが……

 そんなやっさんの真髄と思った一番のエピソードは、やっさんの葬儀での一八と義母らとのやりとりだった。

 やっさんは漫才でも自身の借金をネタにしていた。家族は「貸した金返せ!」と借金取りがやってくることを覚悟していたが案の定、「いわゆる若い衆」が続々とやってきた。

「素性を名乗った後、『お父さまにお金をお貸ししています」と借用書を見せられた。『ご、5億!?』。始まったばかりで、これとは…。今日はとんでもない日になると思った」

 ところが、「心配しないでください」と言って「目の前で証文を破った上で100万円が入った香典を置いていってくれた。そういう方が8人も。後で(借金を)全部足してみたら20億円近くあった」。家族一同仰天したのは当然だが、結局、「借金は0円。隠し子も一人も登場しなかったので0人」だったという。

 一八は「父親の遺体の横で安堵し、疲れた体を横たえた。聞こえてきたのが、亡き父の口癖。『人間いうのはな、死んだ時に初めてその人の値打ちがわかるんや』」と結んだ。

 やっさんは日頃から「節税は脱税」と言っていたという。頓着せずに好きなボートなどにお金をつぎ込んだ上での借金だったが、やはり言葉の重みが違う。

峯田淳/コラムニスト

デイリー新潮編集部

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