浮気発覚で離婚から3年後 「30代サレ妻」に元夫から届いた不穏な小包の中身は…【川奈まり子の百物語】

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夢の続きは

 奇妙な出来事だったが、これでお終い……になるはずだった。

 箱が届いた日の夜に、久しぶりに峠道の夢を見た。
 
 ただ、これまでは無かった夢の続きがあった。
 
――ふと気づくと元夫の姿が車の中から消えている。そこまでは今までと同じなのだが、そこで目が覚めず、彼女は慌てて辺りを見回す。

 すると、森に入ってゆく夫の背中を見つけるのだ。

 急いで車から降りて夫を追いながら、「どこへ行くの?」と呼び掛けるが、夫は答えず、樹々の間に消えていこうとする。
 
 結美さんは、真っ暗な森の奥へ足を踏み入れることを躊躇した。

 すると、遠くから女性の悲鳴が聞こえてきた。

 ギョッとして立ちすくむ。

 そのとき、土の匂いがにわかに強まったかのように感じ、梢のざわめきと虫の声だけが鼓膜に溢れて、なぜか、今ここには生きている人間が自分しかいないことをふいに悟った。

 つまり、元夫も、あの悲鳴の主も、すでに死んでいる――。

 ***

 嫌な気持ちにしかならない郵便物。そのためか不穏な夢に続きができてしまった。【記事後編】では、実際に“あの場所”に向かう展開に。

川奈まり子(かわな まりこ)
1967年東京生まれ。作家。怪異の体験者と場所を取材し、これまでに6,000件以上の怪異体験談を蒐集。怪談の語り部としても活動。『実話四谷怪談』(講談社)、『東京をんな語り』(角川ホラー文庫)、『八王子怪談』(竹書房怪談文庫)など著書多数。日本推理作家協会会員。怪異怪談研究会会員。2025年発売の近著は『最恐物件集 家怪』(集英社文庫8月刊/解説:神永学)、『怪談屋怪談2』(笠間書院7月刊)、『一〇八怪談 隠里』(竹書房怪談文庫6月刊)、『告白怪談 そこにいる。』(河出書房新社5月刊)、『京王沿線怪談』(共著:吉田悠軌/竹書房怪談文庫4月刊)

デイリー新潮編集部

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