秋ドラマ屈指の注目作「菅田将暉」主演 バブル前夜「1984年」東京・渋谷の青春群像劇への期待
三谷氏の青春を描く
テレビがつまらなくなったと嘆く人が多いようだが、秋ドラマは期待できそう。三谷幸喜氏(64)、野木亜紀子氏(51)ら大物脚本家たちが顔を揃える。演じる側も菅田将暉(32)、大泉洋(52)ら実力派が登場する。注目の若手も脚本を書くから、新旧対決の構図にもなる。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】
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【写真】菅田将暉の「パパ&ママ」、そっくりな「弟」も。話題となった「菅田ファミリー」
三谷幸喜氏による秋ドラマはフジテレビ「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」(1日スタート、水曜午後10時)。略称は「もしがく」になる。
物語の舞台は1984年の東京・渋谷。当時の渋谷は映画館とファッションビルの街として知られたが、西武劇場(現PARCO劇場)などの劇場も立ち並び、演劇街でもあった。
主人公は菅田将暉が演じる演出家の卵・久部三成。大物演出家の蜷川幸雄さん(2016年没)を目指していた。ところが所属していた劇団から追放されてしまう。あまりに横暴だったからだ。
三成は途方に暮れ、渋谷を彷徨う。辿り着いたのは八分坂だった。架空の地名である。モデルはおそらく道玄坂だろう。三成はそこの住民に導かれ、ある劇場の門を叩く。WS劇場だ。
ここで新しい劇団と出会うのか。いや、WS劇場はストリップ劇場だ。道玄坂には昔も今もストリップ劇場がある。
共演陣も豪華で、まず二階堂ふみ(31)。WS劇場の妖艶でミステリアスなダンサーに扮する。神木隆之介(32)は劇場の仕事も手伝う若き放送作家・蓬莱省吾を演じる。
蓬莱のモチーフは三谷氏。三谷氏は1983年に劇団「東京サンシャインボーイズ」を旗揚げする一方、当時は放送作家もしていた。浜辺美波(25)は地元の八分神社の巫女・江頭樹里を演じる。
ほかの共演陣も贅沢。喫茶店のマスター役で小林薫(74)、劇場の用心棒役で市原隼人(38)、劇場のダンサー役で秋元才加(37)、同・小池栄子(44)らが出演する。
作風は三成を中心とする青春群像劇になる。あのころの若者たちの情熱や苦悩、恋などが描かれる。三谷氏をモチーフとする蓬莱が登場するだけあり、設定は三谷氏の実体験に近いという。三谷氏の半自伝的な物語になりそう。
三谷氏は「鎌倉殿の13人」(2022年)などNHK大河ドラマや単発ドラマはほぼ切れ目なく書いてきたが、民放のプライム帯(午後7~同11時)の連続ドラマは25年ぶり。
「(この間、)僕より優れた方が絶対にたくさん出てこられたわけで。その方たちと肩を並べるために、自分にとって一番勝算のあるテーマは何なのかを考えるところからこの企画はスタートしました」(TVerの三谷氏のインタビュー)
確かに自伝的青春記は面白くなりやすい。作者の最も多感で真っ直ぐな時期の体験を描くからだ。自伝的青春小説にもヒット作が数多い。また誰にも青春はあるから、共感も得やすい。
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