ディズニーは車椅子、体育見学で「なんで?」と言われ… 21歳女優が生きる“片耳難聴”の知られざる日常

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坂上未優インタビュー前編

 女優、インフルエンサーとして活動する坂上未優さん(21)は、左耳が聞こえない片耳難聴だ。国内に30万人以上がいるとされるが、周囲にはわかりづらい“目に見えない障害”で国の支援も遅れている。YouTubeなどで片耳難聴についても発信している彼女に、片耳難聴の実態や大変な点をライター・グラビア評論家の徳重龍徳氏が聞いた。

――女優やゲーム配信などをしている坂上さんですが、片耳難聴を抱えています。YouTubeなどでも片耳難聴について発信されていますが、何歳ごろから耳の異変には気付いたんですか。

坂上:もともと生まれた時から耳が聞こえづらい方だったんですが、小学4年生くらいの聴力検査で引っかかり、病院に行ったところ「左耳が人の半分くらいしか聞こえていない」と診断されました。中学生の時に悪化して、左耳がほぼ全部聞こえない状態になりました。

――不勉強で坂上さんのYouTubeを見るまでは知らなかったんですが、片耳が聞こえなくなると平衡感覚が保てなくなり、転びやすくなったりするそうですね。

坂上:そうなんです。左と右で聞こえ方が違うと平衡感覚が保てなくなるみたいで。私の場合は突然、朝起きようと思っても起きられなくて。それでも踏ん張って起きようとするとベッドから降りた瞬間に転げ落ちてしまって。立ち上がろうとするとめまいがして気持ち悪いんです。これはおかしいぞとなって病院に行きました。治るまでには1年くらいかかりましたね。

 家の中では歩けていて、近所への買い物くらいは母や姉の手を借れば大丈夫だったんですけど、ディズニーランドだったり水族館だったり人が多いところでは、いつめまいになって周りの方に迷惑かけてしまうか分からないので車椅子を借りて回っていました。

――YouTubeでは人混みの中にいると気持ち悪くなるとも話していましたね。

坂上:それはあります。人混みであったり、いろんな人がザワザワと話している状態だと、聞き取りづらいですし、それに聞こえない耳の音を、右耳や目で情報を補おうとするので、気持ち悪くなります。

「なんであいつは見学なんだ」

――坂上さんは片耳の難聴なので、一見健常者に見える分、誤解も生みやすいそうですね。

坂上:どうしても左側から話しかけられると聞こえなくて、それが無視しているように見えてしまうというのはあります。

 中学の時に左耳の聴力が急になくなり、平衡感覚がなかったので、学校には行っていたんですが、体育を休んでいたんです。そうすると「なんで、あいつは見た目はどこも悪くなさそうなのに見学なんだ」と白い目で見られたり。一時期、耳の聴力を同じくらいにするために器具をつけていたことがあったんですけど、「なんで学校でイヤホンつけているの?」と言われたりしました。

――中学時代には一時期、両耳ともに聞こえなくなったそうですね。

坂上:はい。ストレスが原因なのか、一時的に両耳が聞こえなくなりました。朝起きたらものすごく静かで。ステロイドを飲んで対処したら1日で治ったんですけれど、あれはもう味わいたくないですね。

――朝起きたら聞こえなくなっているのは怖さを感じます。耳の治療なんですが、投薬によるものなんですね。

坂上:私はずっと投薬による治療です。難聴にも何種類かあるんですけれど、私は感音性難聴で、さらにそこにも色々と種類があるんです。

 私は耳に音は入っていて、耳の機能も全部正常なんですけれど、入った音を脳に届ける神経の方がうまくいっていないんです。なので本当は補聴器をつけても聞こえるはずはないんですけれど、でもなぜか聞こえます。まだ解明できていない何かがあるのかもしれないです。

 知り合いで私と同じように神経が原因の難聴の方がいらっしゃったんですけど、ちょっとその方が交通事故に遭い、大きい衝撃を受けたことで神経が繋がって聞こえるようになったんです。なので、実際は誰にも分からない感じなんです。

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