最終回で最高視聴率「あんぱん」の“残念だったところ” 「今田美桜」ではない「一番目だった出演者」は?
国民的アニメ「アンパンマン」を生み出した漫画家・やなせたかしの妻・小松暢(のぶ)をモデルにしたNHKの朝ドラ「あんぱん」が9月26日に最終回を迎えた。この日の視聴率は18・1%と番組最高を記録(ビデオリサーチ調べ、関東地区・世帯:以下同)。全130話の平均視聴率は16・1%で、ワースト記録を打ち立てた前作「おむすび」の13・1%を優に上回った。はたしてドラマとしての出来はどうだったのか、次作「ばけばけ」への期待を含めメディア文化評論家の碓井広義氏に聞いた。
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最終回の直前にヒロイン・のぶ(今田美桜)が大病を患うなどしたものの、最後は夫の嵩(北村匠海)と仲良く手をつないで歩く後ろ姿で幕を閉じた「あんぱん」。最後の最後まで視聴者の目を離さずに大団円を迎えた。脚本は「Doctor-X 外科医・大門未知子」シリーズ(テレビ朝日)や2014年の朝ドラ「花子とアン」、18年の大河ドラマ「西郷どん」などで知られる中園ミホだ。
碓井氏は言う。
「戦前から戦中を経て戦後へ、という朝ドラの王道を見せてくれました。今年が昭和100年、戦後80年であることをきちんと押さえたドラマであり、見応えがありました。これには前作『おむすび』のヒロイン(橋本環奈)が平成ギャルという架空というより空疎なヒロインだったことも影響していると思います。応援したいと思うこともないヒロインだったため、『あんぱん』は得をしたところもあったと思います」
実際「おむすび」の視聴率は初回の16・8%を超えることはなかったが、「あんぱん」は最終回で最高視聴率を記録するなど対照的だった。
「ただし、見終えてみて、はたして『あんぱん』はヒロイン・のぶの物語だったのだろうか、とも思いました。本当はやなせたかしさんを描きたかったけれど、中園さんは朝ドラのために彼の妻にスポットを当てたのではないか。彼女はやなせさんと個人的なお付き合いがあったそうですからね」(碓井氏)
「あんぱん」がスタートする前、中園はインタビューでこう答えていた。
“軍国の鑑”は創作
《アンパンマンが誕生するずっと前、小学生の私は、やなせさんと文通をしていました。『愛する歌』という詩集に感動して手紙を送ったところ、すぐにお返事をくださったのです。何度かお目にかかったこともあります。やなせさんはいつもやさしい笑顔を浮かべ、「元気ですか? お腹はすいていませんか?」と声をかけてくれました》(「あんぱん」公式ホームページより)
「実際、11週から12週にかけて、のぶの出演はほとんどなく、中国へ出征した嵩が主役でした。このことが後に“逆転しない正義”という『アンパンマン』への思いにつながるわけですが、逆にこの思いにつなげるために、のぶの前半生は事実とはずいぶん変えられています。地元・高知で男勝りの“ハチキン”と呼ばれた彼女は、戦時中は“愛国の鑑”と称される教育者に。終戦後、子どもたちに軍国教育を施したことに苦しみ、彼女も“逆転しない正義”を追い求めるようになるわけです。ただし、ヒロインが軍国教師になったことは中園さんの創作であり、フィクションですからね」(碓井氏)
確かにモデルの小松暢が教育者になったことはなかったようだ。もっとも、彼女をモデルにしてはいるが「あんぱん」がフィクションであることは発表されている。
「それでも実際、アニメ『それいけ!アンパンマン』(日本テレビ)の映像が使用されていたので、全くのフィクションというわけでもない。ドラマの後半はかなり史実に忠実なようですが、前半でモヤモヤを感じた人もいたのではないでしょうか」(碓井氏)
10年前期の朝ドラ「ゲゲゲの女房」は漫画家・水木しげるの妻・武良布枝がモデルだった。ヒロインを演じたのは松下奈緒だ。
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