最終回で最高視聴率「あんぱん」の“残念だったところ” 「今田美桜」ではない「一番目だった出演者」は?
一番得をしたのは?
「人物設定は『あんぱん』とよく似ていますが、『ゲゲゲの女房』は武良布枝さんの自伝エッセイを原案にしていますし、実際、水木夫妻は二人三脚でやられてきた。それと比べると『あんぱん』には二人三脚感が乏しかったように思います。やなせさんが若い頃、漫画以外で売れてしまったことが原因ですが、そのためヒロインの実在感が希薄に感じられました」(碓井氏)
では、ヒロインを演じた今田はどうだったのだろう。
「彼女は頑張ったと思います。嵩はのぶが“ドキンちゃん”のモデルと言っていましたが、実際、似ていますしね。これまで今田は今時の女性を演じることが多かったわけですが、ある種の時代ものである『あんぱん』を見事に乗り切ったと思います」(碓井氏)
では、中園が描きたかった嵩を演じた北村はどうだったか。
「やなせさんってこんなに暗い人だったのかな、と。ともあれ、大柄のメカネをかけた北村はやなせさんに似ていて、よく演じたと思いましたが、役者としてはちょっと損な役回りだったかもしれません」(碓井氏)
一番得をした役者は誰だろう。
「やはりのぶの妹・蘭子を演じた河合優実でしょう。画面の中での存在感がとにかく強かった。唇の端が少し動いただけでドキッとしました。映画女優の強みとでも言うのか、彼女をヒロインにしてもよかったほどでした」(碓井氏)
気になるのは次作「ばけばけ」だ。「おむすび」に次いでNHK大阪放送局の制作となる。
意外な小泉八雲
「『怪談』で知られる作家ラフカディオ・ハーン(小泉八雲=1850~1904)とその妻・小泉セツという実在の人物がモデルですが、違った意味の難しさがあるように思います。そもそもなぜ今、小泉八雲なのか。島根の没落武士の娘として産まれた明治女のヒロインが、外国人の英語教師の妻となるわけですが、当時2人がどのような扱いを受けたのか。誹謗中傷が圧倒的で、陰口はもちろん差別だってあったでしょう。これをどう描き、今の時代のドラマとして何を得るべきなのか。NHKは説明すべきだと思います」(碓井氏)
公式ホームページには《「怪談」を愛し、外国人の夫と共に、何気ない日常の日々を歩んでいく夫婦の物語です》とあるが……。
「日本人は八雲に日本文化を愛した親日家というイメージを持っています。しかし、実際の彼は日本語が上手ではなかったし、彼が愛したのは彼が理想とする日本文化であり、西洋化していく日本を憎悪したとも言われています。日本に帰化したのも、財産を子どもたちに引き継ぐための実務的な理由からだったと聞きますからね」(碓井氏)
八雲を演じるのは英国の俳優でミュージシャンのトミー・バストウ。ヒロインは高石あかりが演じる。
「高石にかかっていると思います。まだそれほど知られていませんが、逸材だと思います。阪元裕吾監督の映画『ある用務員』で彼女と伊澤彩織が女子高生の殺し屋コンビを演じて話題となり、同監督の映画『ベイビーわるきゅーれ』では主役に昇格。とんでもない役を普通に演じられる女優です。23年のドラマ『わたしの一番最悪なともだち』(NHK)では主演の蒔田彩珠が憧れる幼なじみ役を演じたのですが、憧れとともに憎しみ、恐れなど愛憎相半ばする難役を飄々と演じていました。このドラマを作ったのがNHK大阪放送局で、その頃から目をつけていたのでしょう。世間から石を投げられたに違いない女性の役を『ばけばけ』でどう演じるのか、ハマったら化けると思います」(碓井氏)





