「カネや女性のスキャンダルがあったら、いますぐ辞めます」 寺田学衆院議員が“政界引退”を決意した理由

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政界引退後は“主夫”に

 49歳の誕生日を翌日に控えた9月19日、立憲民主党の寺田学衆院議員が次の衆議院選挙に出馬せず、政界から引退することを表明した。筆者は寺田氏と15年来の付き合いだが、突然の発表には驚かされた。そこで急きょ、本人に話を伺った。

「ここ数年、絶えず考えていました。6年前に妻(寺田静氏)が無所属で参議院議員に当選し、夫婦で国会議員になりました。以来、二人で国会や地元での活動、家事と育児の両立に取り組んできましたが、現実は、平日は夫婦共に朝から夜まで予定がビッシリ。週末も選挙区で公務や選挙関連の活動が続く。とくに子育て面に少なからぬ影響が出ていました」

 決定的だったのは、今年に入って母親に介護の必要が生じたことだったという。

「限られた時間と労力で、仕事と家庭を両立させるのは不可能と悟りました。今後は“主夫”として、妻を支えていくことになります」

 平成15年に27歳で国会の赤じゅうたんを踏んで以来、7回当選。20年となる議員生活では主として国会対策や政策立案に取り組み、与野党に幅広い人脈を培った。立民の次世代を担う一人と目されていただけに、永田町では「早過ぎる」という驚きの声とともに「ウラ事情があるのでは」との臆測も広がった。

「先ほどお伝えした以外の理由はありません。私にカネや女性のスキャンダルがあったら、いますぐ議員辞職します。任期を全うするなんて言いませんよ」

 長年歩んだ国政の道。政界の現状や、所属する立民に見切りをつけたのか。

「引退を明らかにした以上、自分がそれを話すのはふさわしくないと思うんです」

 寺田氏の実父は、秋田県で知事を務めた寺田典城氏。父のように、いずれ地元で知事選に出る考えは?

「ありません。私は“政界を引退する”と言いました。政界に戻る可能性が少しでもあるなら、こんな言葉は使いません。非常に重く、一生に一度しか使わない言葉。今後は妻を支える秘書であり、夫であり、父親でありたいと思っています」

言い出したのは妻

 決然と語る寺田氏は、こんな内幕も教えてくれた。

「実は、最初に政界から身を引くと言い出したのは妻でした。今年の春ごろ“参院議員を1期で引く。次の選挙には立候補しないで家事と育児に専念する”と。でも、私は妻に“まだ頑張ってほしい”と思っていて」

 静氏は7月の参院選で再選。秋田で県選出の女性国会議員は彼女だけだ。

「妻は私が耳にできない県民の声を聞くことができる。だから私は、“自分が君を支えながら家事や育児を担う”と提案したのです」

 それは夫婦で悩みながら話し合いを続けた末に、夫が導き出した結論だった。

「妻は自分が優先されることに大きな心苦しさを感じていた。それでも“選挙で頂いた多くの声に応えたい”との思いから、最後は受け入れてくれました」

 最後に寺田氏は、茶目っ気たっぷりにこう語った。

「私の引退報道が出て以降、多くの国会議員から激励の電話を頂きました。その9割は自民党の方でしたが」

 今回、彼が言葉を濁した質問は一つだけ。その理由を垣間見た気がした。

政治ジャーナリスト 元NHK解説委員 増田 剛

週刊新潮 2025年10月2日号掲載

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