「ステマが重い十字架に」 自民党新総裁は早期の解散総選挙に打って出られるか

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なかなかショッキングだった

 自民党総裁選に出馬する小泉進次郎農水相は、陣営の事務所が動画配信サイトでステマ・コメントを幅広く依頼していたことを認め、謝罪した。この報道のインパクトと共に今後の政局への影響について報じる。

 9月25日発売の「週刊文春」は、小泉陣営で広報を担当する牧島かれん元デジタル相が
「動画配信サイトで小泉氏にプラスになるようなコメントを書き込んで」などと依頼し、そのコメントの例も示していたと報じた。むろん支持者が応援コメントを書きこむこと自体は違法ではない。しかし議員らが素性を隠して書き込むとすれば、いわゆる「ステルス・マーケティング(ステマ)」にあたるので問題ではないか、という声があがっているのだ。

 小泉氏はこの報道を認めて謝罪した。

「これまでも各政党で同様の行為が行われているのではないかと言われてきましたが、選挙の最中に実際に行為を認めたことは極めて珍しく、各方面に衝撃が走りました」

 と、政治部デスク。

党内の亀裂の深さを

 かつて自民党の河井克行・案里夫妻による大規模選挙買収事件でも、候補者側の意向を受けて業者が対立候補へのネガティヴ情報の発信を行ったことが裁判で明らかにされている。表に出ていないだけで、与野党問わずこの手の「ステマ」的手法を採用している者はいるだろう、という見方はある。

「とはいえ、今回、他の候補者への誹謗中傷とも受け取れるコメント例が具体的に示されていたこともあり、なかなかショッキングでした」(同)

「ビジネスエセ保守に負けるな」「やっぱり仲間がいないと政策は進まないよ」などといった例文は、高市早苗氏を想定してのものだとされる。

 それでも小泉氏以外の候補がこの点を問題視することはなかった。

「今回の総裁選に関して自民党は“解党的出直しが必須”と訴えています。解党的出直しという文言自体はこれまで何度も繰り返された自民党なりの“自分勝手な言い回し”で目新しいわけではありません。が、候補者のアラを探って論戦を仕掛けたり分断を生みかねないテーマに足を踏み入れたりという動きはまったく見えず、結果が出る前から対立を回避して“ワン・チームを心がけよう”といった声掛けでもしているのかと勘ぐってしまうほどおとなしいですね」(同)

「早期解散に打って出る」観測

 そんな空気の中で、誹謗中傷とも言えるレベルの書き込みが仕込まれていたというのはどういうインパクトがあるのだろうか。

「皮肉なことですが、党内の亀裂の深さを内外に印象付けました。加えて、今後のあらゆる選挙ごとに自民党が同様のことをやっているのではないかという疑義を呈される可能性が出てきました。これを払拭するのは数年レベルでは難しく、重い十字架を背負ったと言って良いのかもしれません」(同)

 誰が新総裁になるかは別にして、新総裁が早期の解散に打って出るのではないかとの見立ては根強くある。

「秋の臨時国会では補正予算やガソリン暫定税率の廃止に着手する必要があります。それをこなして年明けに状況が整えば解散もあり得るというのが永田町内の見立てですね。その際の根拠となるのは自民党独自の情勢調査です」(同)

 もっとも、その調査を鵜呑みにできないのは昨年の解散総選挙が示している。石破茂首相は早期の解散を否定していたが、情勢調査が悪くないことを伝えられたのと森山裕幹事長の進言を受け入れて衆院を解散した結果、「衆院で自公与党で過半数割れ」の結果となった。が、人はつい希望的な観測にすがりたくなるものだ。

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