GDPでドイツに負けたのは「当たり前」 ダラダラ働くのをやめないかぎり日本は浮上しない
恥ずかしいほど低い日本の労働生産性
かつてはアメリカに次ぐ世界第2位の経済大国だったわがニッポン。ところが、名目GDPは2010年に中国に抜かれ、2023年にはドイツにも抜かれてしまった。ドイツの人口は約8,400万人で、約1億2,300万人を数える日本の3分の2程度にすぎない。30年前の1995年、すなわち「失われた30年」がはじまったころには、ドイツの名目GDPは日本の47%にすぎなかった。それが追い抜かれたのである。
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むろん、度を越した円安の影響はある。しかし、それだけではここまでの転落の説明にはならない。IMF(国際通貨基金)の予測では、2026年にはインドにも抜かれ、世界第5位に後退するという。
ここからどうやって挽回するか。それこそが喫緊の政治的課題でなければならないはずだが、議論は目先の物価高対策に終始している。歯がゆくて仕方ない。円安の解消を含め、日本の底力を上げること以外に物価高対策はないと思うからである。
それはともかく、テレビ朝日系「羽鳥慎一モーニングショー」でも先日、日本とドイツの経済格差が広がっているという問題を取り上げた。日本人とドイツ人には「勤勉」という共通点があると指摘されてきたのに、どうしてこれほど差が開いてしまったのか。どうしてドイツ人のほうが多く休んでいるのに、給料は高いのか――。
番組では、2023年におけるG7各国の労働生産性が、1時間あたりに生み出される金額(円換算)で示された(番組では「1人あたりや1時間あたりにどれだけ成果を生み出したかの指標」と記されていた)。日本生産性本部の資料から作成されたというその金額は、アメリカ1万4,519円、ドイツ1万4,341円、フランス1万3,791円、イギリス1万1,978円、カナダ1万611円、そして日本8,441円。円安の影響はあるとはいえ、日本はもはや「G7」の一員であるのが恥ずかしいほど一人負けしている。
どうしてこんなことになってしまったのか。
短い時間に効率よく仕事をするドイツ人
日本人と同様に「勤勉」だといわれるドイツ人だが、彼らの働き方を間近で見た日本人は、異口同音に次のようにいう。「どうしてドイツ人はこんなに働かないのか」。実際、夏季やクリスマスの時期には、彼らは日本では考えられないほどの長期休暇をとる。働き方改革などと声高に訴えるまでもなく、定時になるとさっさと帰る。むろん、毎週の休日はしっかり休む。
だから、これも番組で示されていたが、1人あたりの平均年間労働時間は、日本の1,617時間に対してドイツは1,331時間で、約2割も短いという。
だが、このことは不思議なようで不思議でもなんでもない。日本では以前から、日本人とドイツ人を「勤勉」という語で括ってきたが、両者の「勤勉」は中身がまったく違う。一般に日本人は、長時間勤務をいとわないという勤勉スタイルなのに対し、ドイツ人は、効率よく働いて時間当たりの生産性を高めるという勤勉スタイルである。それが1万4,341円と8,441円という労働生産性の差になって現われている。
働き方の違いを観察しやすいのは、レストランや酒場である。ドイツ人は客と客とのあいだを効率的に動き回り、無駄にしている時間が少ない。まるで時間を惜しむように、凝縮して働いている印象を受ける。その代わり、自分の勤務時間が終わると、それこそ仕事を鮮やかに切り上げ、足早に帰っていく。
こうした働き方の特徴は、企業や団体に勤務する人にも共通すると聞く。残業する人は非常に少ないが、それは仕事量が少ないからではない。彼らはやるべき仕事をいかに効率よく進め、終えるかということに力を注ぎ、その結果として残業をしないで済んでいる。その点では、日本人が「いい加減だ」「遊んでばかりいる」とバカにしてきたイタリア人も変わらない。たしかに、彼らは私生活をエンジョイするのに長けているが、それは効率よく仕事を終えた結果である。
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