親も子も「お互いに期待しない」のが最善の遺産相続対策…50歳を過ぎて考える「ドライな家族関係」がもたらす効果

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 きょうだい間・家族間の仲が悪くなるきっかけとして、遺産相続を巡る諍いがある。遺言状がない場合、法定相続人と受け取る率は決まっているが、各人が様々な思惑と家計の事情を抱えているだけに、なんとしても自分が多くを得たいと考え、相容れない主張をぶつけ合う。そうしている内に「お前とは絶縁だ!」といった話にまでなってしまいがちなのだ。【中川淳一郎/ネットニュース編集者】

法定相続割合に従え

 仮に遺言状に「残った財産は私がもっとも可愛がっていたタケシに全額渡す」などと書かれてあっても兄のヒロシと妹のタカコは到底納得できないだろう。だが、タケシとしては、「親父の遺志を尊重すべきだからオレが全部もらう」という話になる。

 となれば、ヒロシとタカコが結託し、タケシを憎むようになる。その憎悪の対象はそれまで可愛がっていた甥や姪にまで及ぶ。実際に聞いた話だが、(ここで言う)タケシを憎むがあまり、ヒロシとタカコは街の「拝み屋(祈祷師)」のところへ行き、タケシを呪い殺してくれ、という依頼をしたというのだ。

 各人の言い分というものは存在する。親による遺言状がなかった場合、「亡くなるまでの10年間、実家近くに住む私が親2人の介護をずっとしていたから、もらうべき割合はきょうだい均等の33.3%ずつではなく、私が50%で、あなた達2人が25%ずつであるべきだ。いや、本当は私が70%であなた達は15%ずつが妥当だ」なんて主張すらしたくなる。或いは、将来的に不動産の値上がりが確実な都心の駅チカマンションに親が住んでいた場合、その家の取り合いになるかもしれない。

 私の場合、現在父親は79歳で母親は80歳、姉は54歳で私は52歳。10年以内に1回目の相続は発生するだろう。相続でモメるのもイヤなため、私の一家は変な話だが、距離を置くようにし、互いに執着がないようにしている。両親は東京、姉は愛知、私は佐賀に住んでいて物理的距離があるため滅多に会うことはない。

 親とも30年近く離れて住んでいるだけに、社会人になってからはすっかり他人のようになってしまった。だから、親からすれば姉の方が可愛い、私の方が可愛い、といった気持ちは特にない。だから遺言は書くにしても、財産分与を巡る依怙贔屓はしないで「法定相続割合に従え」とだけ書くと思う。現にそう言われている。

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