親も子も「お互いに期待しない」のが最善の遺産相続対策…50歳を過ぎて考える「ドライな家族関係」がもたらす効果

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ドライな関係のまま家族の終焉を迎えたい

 これで私も姉も納得できるのだ。すでに姉とは「遺産ごときで揉めるのはやめておこうぜ」という話はしている。一体いくらの財産があるのかは聞いたこともない。両親が把握しているだけだがそれでいい。どちらかが亡くなった時に通夜の後、残った親と姉と私と3人で財産状況や銀行口座情報等をシェアすればいい。そして、姉一家も私も決して裕福ではないが、生活に困るような金銭状況ではない。そのため切実に遺産を必要としているわけではない。ここがまず重要なのである。

 仮に遺産が一人10万円しかなかったとしても、「まっ、これで2泊3日・台湾の旅に妻と行くか♪」と思うだけで、そのカネに対する執着はない。姉にしても、長男は社会人で、次男は大学4年生。もう我が子にこれ以上カネはかからないし、住宅ローンも大部分返している。

 このように、第1回目の遺産相続でモメる要素はないのだが、2回目かつ最後の遺産相続でモメないよう両親と姉と決めたことがある。「私たちの介護はするな」である。両親は「アンタ達に迷惑はかけられないから」と認知症を含めた要介護状態にならないよう注意し、今まで生きてきた。幸い、80歳まで大病を患ってもいないし、電話で喋るとしっかりとしているし、オレオレ詐欺に引っ掛かったこともない。これが2回目でモメないための重要事項だ。

 仮にどちらかの親が要介護になったら母(父)は姉と私に介護を頼まない。自分がメインで介護をし、ヘルパーにお金を払って介護を依頼する。そして、配偶者が死に、残された場合でも「アンタ達は残った方の介護をするな。その時は施設に入る。そのぐらいのカネはある」と宣言をされた。要するに、人生の末期に我が子に迷惑をかけたくないのと、妙な情をどちらかに対して抱きたくないのである。

 よって、第二回目の遺産相続でもあくまでも法定相続割合がベースとなる。こうした確認を一回目の通夜の席では改めてしようと思っている。問題は家のことになるが、姉はすでに家を持っている。私は賃貸暮らしだ。姉は「アンタが住めばいい」と言うだろうが、現実的な線としては、2人目の親が死んだところで売却をし、その金額を遺産に加算するということになるだろう。

 かなりドライに聞こえる遺産相続対策だが、現に我が家は特にモメごとはない。このまま穏やかにドライな関係のまま家族の終焉を迎えたい、というのが我々4人の切なる願いなのである。「そんなこと言ったっていざ遺産相続の段になるとモメるものだよ(笑)」とYahoo!ニュースのコメント欄に書き込まれそうな話だな。

ネットニュース編集者・中川淳一郎

デイリー新潮編集部

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