「収容所で花魁道中」 中国で大ヒットのトンデモ反日映画「731」のシュールすぎる内容とは 「日本文化それ自体に嫌悪感を抱かせたい意図が」
劇中での説明は一切なかった
「抗日戦争勝利80年」に合わせ、9月18日、中国で映画「731」が公開された。第2次世界大戦期の大日本帝国陸軍に実在し、秘密裏に細菌兵器を研究して人体実験も行っていたとされる「731部隊」を題材にした同作は、彼の国での積年の反日プロパガンダが“奏功”したせいか、公開4日間で興行収入230億円を超える大ヒットとなっている。しかし、その中身を検証してみると、失笑を禁じ得ないシロモノなのだった。
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映画の主人公は、中国人の中年男性。外国人相手に浄水器を売ろうとするが、それは日本陸軍から盗んだ品だった。軍にバレた主人公は731部隊の「特設監獄」に強制連行され、以降、おぞましい実験の数々を目撃することになるという“ストーリー”なのだが、実際に映画を見たさる日本人ジャーナリストは、戸惑いながらこんな感想を明かす。
「何の脈絡もなく唐突に、収容所の廊下で花魁道中が始まるのです。しかも、付き人があんどんや番傘まで持っていて、かなり本格的。収容所の捕虜たちも驚いていましたが、観客の私も驚いてしまいました。あれは一体、何だったのか」
劇中での説明は一切なかったという。軍への慰安訪問か、それとも捕虜に日本の文化を見せつける深謀か。よく分からないが、トンデモ演出はさらに続く。
「それはもうシュールでした」
「中庭で捕虜たちに綱引きをさせ、負けた方が処刑されるというシーン。刑場の脇では、ちょんまげに白装束の男たちが三味線を弾いているんです。何だかカオスな状況でした」(前出のジャーナリスト)
さらに、物語の中盤以降では、主人公らは脱獄しようと模索するのだが、
「日の丸に『必勝』と書かれた鉢巻きを頭に巻き、ふんどし姿になった日本兵が脱走しようとする捕虜を止めようとし、取っ組み合いになる一幕もありました。それはもうシュールでした」(同)
〈パリのエッフェル塔を支配下に〉!?
緊迫する現場にそぐわないほど誇張された日本文化の数々。出来の悪いパロディーとしか思えない。中国事情に詳しいフリーライターの西谷格氏が解説する。
「悪事に及んだのが日本人だと強調したいがため、過剰に“日本の要素”を詰め込んだのでしょう。日本文化それ自体に嫌悪感を抱かせたいという意図もあるのかもしれません」
また終始、731部隊長の石井四郎中将を象徴的で分かりやすい“悪”として描くのも特徴だ。終盤、石井はこんなセリフを呟く。
〈世界征服の計画はまた一歩前進した。近いうちに自由の女神、万里の長城、モスクワの赤の広場、パリのエッフェル塔、ことごとくわが支配下に置かれよう〉
実際に石井中将が世界征服なるものまで企んでいたのか、戦後の研究には見当たらず……。笑止千万な「トンデモ反日映画」。それ以外に評価のしようがなさそうだ。9月25日発売の「週刊新潮」では、中国で“話題沸騰”の映画「731」について、その内容や製作の意図を詳しく検証する。



