「最高時速320キロ」の新幹線で「荷物を運ぶ」サービスに熱視線が注がれる理由 “圧倒的なスピード感”“渋滞に巻き込まれない”だけではないメリットとは

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日本通運も新幹線を利用

 JR5社が新幹線を使った荷物輸送に力を入れる理由として、ニーズの高まりが背景にあるのは言うまでもない。一方で、環境問題や物流2024年問題への対策という“公益性”も大きな影響を与えている。

「かつて新幹線では車内販売が行われていましたが、最後まで続いていた山陽新幹線も2024年3月で終了しました。結果、車内販売の物品をストックしていた場所が“空きスペース”になったのです。新幹線で荷物を運ぶというサービスは、JR5社にとってスペースの有効活用という側面もあります。さらに新幹線は遅延がほとんどありません。渋滞に巻き込まれることの多いトラックより優位性があります。大量の荷物を運ぶことは無理でも、運行本数が多いのできめ細かな輸送が可能です。トラックより二酸化炭素の排出量は少なく、乗り心地の良さを実現している低振動性は荷物の破損を大幅に減らします。精密機器の輸送も対応可能です」(同・記者)

 物流大手が新幹線を使って荷物を運ぶことも増えてきた。日本通運は2月から「NXスーパーエクスプレスカーゴ」のサービスを開始した。荷物を運ぶ際に新幹線の輸送サービスを利用するというもので、遠隔地の即日配達を可能にしたほか、二酸化炭素の排出量だけでなくドライバーの勤務時間を削減する効果も期待できるという。

焼鳥と東海道新幹線

 JR北海道も佐川急便と連携し、新函館北斗駅と新青森駅の間で宅配便の荷物輸送を平日に実施している。佐川急便の担当者が荷物を入れた専用ボックスを新幹線の客室内に積み込み、到着すると取り下ろしも行うというものだ。

「どんなものを運んでいるのか、デイリー新潮はJR5社に取材を依頼しました。基本は鮮度が重要な魚介類、野菜や果物、賞味期限の短い弁当などの食料品、低振動性を評価しての精密機械、電子部品、医療用機器が中心のようです。ただ珍しい依頼もあるそうで、例えばJR東日本は観賞用の錦鯉や引っ越しの家財を新幹線で運んだこともあるとの回答でした。JR西日本やJR九州は新幹線のスピードを活かし、血液検体や新聞の輸送も引き受けているそうです。名古屋市では愛知国際アリーナ(IGアリーナ)が完成し、こけら落としとして7月に大相撲名古屋場所が開かれました。その際、両国国技館の名物である『国技館焼鳥』の輸送をJR東海が担当。名古屋場所中は東海道新幹線で毎日、焼き鳥を輸送したとのことでした」(同・記者)

 新幹線による荷物の輸送は着実に実績を積み重ねていることが分かる。そのため物流業界などから「新幹線に荷物を運ぶ専用車両を連結してほしい」との要望も出ている。だが、この点に関してはJR各社で“温度差”があるようだ。

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