タイ移住のTKO木下が袈裟を着て大炎上 問題行動を繰り返す「悪癖」とは

エンタメ 芸能

  • ブックマーク

冒涜に等しい

 今回の炎上も、その延長線上にある。本人は「ただ笑ってもらいたかった」と弁明したが、文化的背景や宗教的文脈への配慮を欠いた行為が笑いにつながるはずもなく、現地の人々にとっては冒涜に等しい。日本において外国人が神社仏閣でルールを無視して騒ぐ姿が批判されるのと同じであり、木下の行為はタイの人々にとって全く笑えない行動だった。

 今回の炎上劇は単なるうっかりミスでは済まされない。なぜなら、木下は相方の木本を日本に残したまま、なぜかタイに移住して芸能活動を続けることを高らかに宣言していたからだ。コンビとしては事実上の活動休止状態になるリスクを背負ってまで、単身でタイに乗り出すからには、人一倍真摯な姿勢で臨まなければいけない。当然、現地の言語や文化についても事前にしっかり学んで、理解を深めていなければいけないはずだ。

 だが、今回の事件が発覚したことで、木下にはその当たり前のことができていなかったことが判明した。これが彼の関係者やファンを大きく失望させることになったのは間違いない。何度も問題を起こし、何度も謝罪をして、何度も反省した態度を示しても、この人は結局、何も変わっていないのではないか。そう思われるのも無理もない。

 これまでの言動から彼の性格を読み解くと、「場を盛り上げよう」「自分を印象づけよう」という気持ちが先走り、他者への敬意や空気を読む感覚が二の次になってしまう傾向がある。過去のパワハラや謝罪会見での暴走も、根底には同じ問題が横たわっていると言える。

 さらに厳しいのは、今回の騒動によって木下がタイ社会や在住日本人からも歓迎されない存在となりつつあることだ。これでは日本での活動基盤を失い、海外でも信用を得られないという八方塞がりの状況に陥る可能性がある。芸人としての再起どころか、1人の人間としての居場所をも失いかねない危うさが漂っている。

 本来であれば、タイ移住は「新しい挑戦」として語られるべき出来事だった。しかし、実際には移住直後に現地民の心を踏みにじる大炎上という最悪のスタートを切った。これまでの悪癖が修正されないまま環境だけを変えても、同じ過ちを繰り返すだけだろう。

 木下が本当に再起を望むのであれば、何よりもまず「相手の文化や価値観に敬意を払う」という基本を身につける必要がある。芸人という仕事は多くの人に支えられて成り立つものなので、他人に対する気遣いができることが大前提となる。このまま自分本位の生き方を続けるのであれば、国内外を問わず誰からも支持されなくなるのは目に見えている。

 今回の炎上騒動は、木下に対する最後通牒とも言えるものだ。この失敗を単なる一過性のトラブルだと考えるのか、芸人としての再生のラストチャンスだと考えるのか。答えはこれからの彼の行動で明らかになるだろう。

ラリー遠田(らりー・とおだ)
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)など著書多数。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。