「人前で服薬はNG」「ビデオ会議の退出は上司優先」…… しばしば炎上のマナー講師は“失礼クリエイター”? 批判に当事者は

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謎マナーが「型」として世に

「マナーとは決して『ルール』のことではなく、『相手を思いやる心を行動に表すこと』。ところが、マナー講師を名乗る方々の言動を見知るかぎり、その“基本中の基本”を認識していない人が多く、衝撃を受けてきました」(西出さん、以下同)

 そういった“マナーの本質を理解していないマナー講師たち”は、わかりやすい「型」を振り回しがち、と西出さんは続ける。

「マナーが批判の対象になるのは、それだけ日本人がマナーに関心を寄せている証拠とも言えます」

 だが実際、理解に苦しむマナーがテレビやSNSで紹介され、世の中に出回っている。

「そういった謎マナーは、ほぼすべてが理にかなっていませんから、面白おかしく語られがちです」

 加えて、あいさつ、服装、言葉遣いなどについて、“同じケースでも講師によって伝える内容がバラバラ”という珍現象も起きている。

「不明瞭な理由で『失礼』と言われ、伝える側の言うことが千差万別で、その根拠がわからない。そんな、不安にかられた人たちが、マナーというものに対して拒絶感を抱き、講師を叩きたくなるのは仕方ないことだとも思います」

メディア、企業側の欲しがり

 また、こうした歪みを増幅させているのが、「表面的なインパクトを欲しがるマスメディアと、厳しさを求める企業の姿勢である」とも西出さんは語る。

 確かにテレビなどのメディアは、視聴者を惹きつける分かりやすい「絵面」を求めがちだ。

「これはダメ、これはOK」といった二項対立の図式は、視聴者に短期的なインパクトを与えるには都合が良い。そこに大げさなリアクションがつくのなら、ますます関心を集めることができる。

「以前は私もメディアや企業研修で、『ダメ! と厳しく言ってください』『叱ってください』とリクエストされました。また、新人研修でビシビシと厳しく指導することを求められたことも」

 つまり、周囲から求められることで、マナー講師は厳しい指導者を演じてきてしまった側面もある、と西出さん。

 その結果、マナーの存在が誤解され、窮屈なものとされ、それを伝えるマナー講師がSNS上で害悪とまで言われてしまうようになったのだ。

「一方で、厳しくてもそこに相手を思いやる心や気持ちがあれば、受け取る側の印象が違うこともあるでしょう。

 根拠のない、マナーとは言いがたいものをマナーと言い張り、次々と新たな型を作り出す『失礼クリエイター』は改めたほうがいいと思いますが、マナーに反した人を叩きまくるSNSの風潮にも、悲しいものを感じます」

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