本人が知らぬ間に「卑猥なセリフをしゃべらされる」ことも…声優「緒方恵美」が生成AIに警鐘を鳴らす理由 「若手を育成する場も、声優としての仕事も奪われかねない」

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ナレーションを生成AIに任せる企業

――ライターの世界でも、生成AIに原稿を書かせているニュースサイトがあります。若手がやってきた小さな仕事を生成AIで代替する動きは、あらゆる業界でみられますね。

緒方:大手企業の方が話していたのですが、プロモーション映像などで使うナレーションは生成AIで充分という考えになりつつあるそうです。ある程度は致し方ない。温度感がない音声だけで良いというタイプの仕事も、あると思うから。

 問題は、それが高じて、「演技も、音楽も、絵も、すべての芸術が生成AIでできるし、充分だ」と思う人が増えてくることです。現に、私たちに仕事を依頼するクライアント側に、そう思っている人たちがいるわけですから。

――私もIT系の経営者に取材すると、そのように考えている人に会います。

緒方:仕事ごとに要求される質の違いがわからない方が、極論に走りやすい傾向があるので……。例えば今、私自身は仕事がなくなったという実感はありません。アニメの声優は、今のところではありますが、生成AIが入り込む余地があまりないから。しかし、弊社で言えば、若手が担当するナレーションの仕事がなくなったという実感はかなり持っています。

 実際、大手声優事務所の経営側スタッフの方と話していると、その点に問題意識を持っている人が多い。以前に比べて相当な数、仕事の減少が生まれつつある。繰り返しになりますが、若手が経験を積む場がなくなると、技能の継承ができなくなってしまう。これは、どのエンタメ業界の人たちも懸念していることだと思います。

第2回【「生成AIが私の声でセリフを読んでも、それは私の芝居ではありません」 声優「緒方恵美」が“声の無断使用”をクリエイターへの冒涜と訴える理由】では、なぜ生成AIによる声優の声の無断しようが許されないのかについて、そしてその根幹にある声優という仕事への思いについて緒方さんに伺います。

ライター・山内貴範

デイリー新潮編集部

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