超有名選手が「すごいものを見た」と唖然…“ゴルフ界の隠れたお宝”を突然持参した米国の収集家 長年隠し持ち続けた理由とは

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マキロイの「驚き」でカードの存在が“発覚”

 ゴルフのコレクターグッズを扱う米ゴールデンエイジ・オークションの見立てによると、「このスコアカードは最低でも5万ドル(約732万円)の値が付く」とのこと。

 世界のゴルフ界で過去に高値で落札されたメモラビリアといえば、たとえば、ウッズが2000年から2001年にかけてメジャー4大会をすべて制覇し、「タイガースラム」を打ち立てた際に使用していたアイアン(タイトリスト681―T)9本とウエッジ(ボーケイ58度、60度)2本のセットだ。2022年に515万6162ドル(約7億5501万円)で落札された。

 マスターズ初代チャンピオンのホートン・スミスのグリーンジャケットは2013年に68万2229ドル(約9990万円)で、かつての「ビッグ3」の1人だったゲーリー・プレーヤーのマスターズ優勝トロフィーは2021年に52万3483ドル(約7667万円)で落札された。

 しかし、メモラビリアの世界では、トラブルも見られる。レイモンド氏は、マキロイ以前にキャリアグランドスラムを達成した5人の選手やアーノルド・パーマーなどのレジェンドのサインを集めたメモラビリアを「これまで、いくつも見たことがあった」そうだが、選手側から訴えられるなどのトラブルに陥ったケースは少なくなかったという。

 レイモンド氏はそうなることを避け、自身のコレクションは個人サイトで地味に公開するにとどめた。とりわけ、5人のサインが揃ってからのオーガスタ・ナショナルのスコアカーは、大事に隠し持っていたという。今回、マキロイからサインを得たのは喜ばしいが、マキロイが大声を上げたこともあって、ビッグニュースとなり、その存在が明るみに出てしまった。

 だが、レイモンド氏は「これからも大事に隠し持っていく。絶対に売らない」と言い切っている。

次に達成する可能性があるのは誰?

 レイモンド氏の「絶対に売らない」は、「今はまだ売り時ではないから売らない」という意味なのかもしれない。

 マキロイに続いて、次にキャリアグランドスラム達成の可能性があるのは、現段階で3つのメジャーを制しているフィル・ミケルソン、ジョーダン・スピース、そしてスコッティ・シェフラーの3人だ。

 しかし、ミケルソンはリブゴルフへ移籍後、成績が下降の一途だ。彼が初制覇を目指すべき残り1つのメジャー大会は、メジャー4大会の中で最もコース設定がタフな全米オープンゆえ、55歳という年齢も考えると、これから勝利することはきわめて難しい。しかも、もはや全米オープン出場資格を満たすこと自体が難しくなっている。

 今年32歳のスピースは、キャリアグランドスラム達成の可能性が無限大。だが、近年は不調気味なので、しばらくは達成がなさそうである。

マキロイはなぜ“上の方”にサインしたのか

 一番可能性が高そうなのは、この4年ほどの間、ずっと好調を維持している世界ランキング1位のシェフラーだ。2022年と2024年にマスターズを制し、今年は全米プロと全英オープンで勝利。残る全米オープンを制すれば、キャリアグランドスラム達成となる。

 そうなれば、きっとレイモンド氏がシェフラーに「このスコアカードにサインをください」と願い出ることだろう。

 レイモンド氏が大切に持ち続けているスコアカードの右半分は、サラゼンからウッズまでの5名のサインで埋められていた。そのため、マキロイはまだ白紙だった左半分の一番上に自身のサインを入れて、こう言ったそうだ。

「あえて、かなり上の方に僕のサインを入れた。僕のサインの下側にスコッティ・シェフラーが大きくサインできるようにね」

 そうなることを、願っている。

舩越園子(ふなこし・そのこ)
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。早稲田大学政治経済学部経済学科卒。1993年に渡米し、在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。『王者たちの素顔』(実業之日本社)、『ゴルフの森』(楓書店)、『才能は有限努力は無限 松山英樹の朴訥力』(東邦出版)など著書訳書多数。1995年以来のタイガー・ウッズ取材の集大成となる最新刊『TIGER WORDS タイガー・ウッズ 復活の言霊』(徳間書店)が好評発売中。

デイリー新潮編集部

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