コメディでも純愛ドラマでも冴えわたる「松たか子」の演技力 今年の映画賞で「主演女優賞」総なめと囁かれる納得の理由

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確かな演技力

 映像作品のレビューサイト「Filmarks」には、8万件近いレビューが寄せられ(9月17日時点)、平均評価は5.0が満点の中で4.2の高評価。その評価帯は4.1~5.0が54%で最多。

 そして、気になるのが松の演技への評価である。

《予想していたよりコメディ要素が多くてびっくり。松たか子は余裕の演技という感じ》

《どこか掴めない雰囲気の役柄とか、ちょっとズレがあるけどテンポよく進んでいく会話とかが好きな人は観ていて楽しいって思う映画》

《大人の品をまといながらも、あどけない可愛らしさが残っていて、本当に魅力的》

 といった声があがっていたが、映画担当記者はこう話す。

「公開は2月でした。その時期に公開された作品は、映画賞レースが本格化する秋以降、各映画賞の審査員たちの記憶から薄れてしまうこともあり、例年ならばその年度の映画賞であまり評価されることはありません。しかし今年、これまで公開された作品の中で、女性の俳優が主演を努めてヒットした映画は数えるほど。なので、現時点での各映画賞での主演女優賞候補となると真っ先に松さんの名前があがることになるでしょう。ここ数年の各映画賞の傾向として、主演女優賞候補にノミネートする女性の俳優の頭数をそろえるのもなんとか、という状況が目立ちます」

ライバル作はあるか?

 今年の公開作で、ヒットの基準とされる興収10億円以上の作品のうち、女性俳優の主演作で松の作品に続くのは、長澤まさみ(38)が新境地のホラー作品に挑んだ「ドールハウス」の18.7億円。ほかに10億を上回った作品はなく、公開前に田中圭(41)との不倫疑惑を報じられ、何かと話題になった永野芽郁(25)主演の「かくかくしかじか」は8.7億円に終わった。

 また、主演が男性で、ヒロイン役の女性の俳優が主演女優賞を受賞する前例もある。それを踏まえると、赤楚衛二(31)主演で上白石萌歌(25)がヒロインの「366日」が25.6億円を記録している。

 今年の邦画実写といえば、なんと言っても9月7日までに興収133億円を突破した「国宝」が各映画賞の大本命になりそう。しかし、作品自体、李相日監督(51)、主演の吉沢亮(31)、助演の横浜流星(29)、高畑充希(33)らは各賞の受賞対象となるが、「主演女優賞」に該当する登場人物はいない。

「良家の子女である松さんは、デビューしたころはお嬢様的なキャラを演じることが多かったんですが、映像作品のみならず、若いころから舞台にも続々と出演し演技力を磨き、役柄の幅を広げました。女優としてキャリアを重ねながら、変なこだわりを持たず、その年代ごと多様な役柄に挑戦してきました。育児と子育てを両立しているだけに、母親役もしっかりフィットしています。すでに松さんは、09年公開の『ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~』で、日本アカデミー賞の最優秀主演女優賞を受賞していますが、出演する作品でことごとく好演しているものの、近年は映画賞の受賞はありません。このあたりで受賞となれば、今後の活動への大きな励みになるのではないでしょうか」(先の映画担当記者)

 では、今後、公開される作品で松のライバルになりそうなのはどんな顔触れなのだろうか?

「まずは、『ナイトフラワー』(11月28日公開)。ドラッグの売人でシングルマザー役を演じる北川景子さん(39)でしょう。彼女はこのところ、積極的に社会派作品に挑戦している印象。どれだけ振り切れた役を演じるかが、評価の分かれ目になるはずです。そして山田洋次監督(91)の最新作『TOKYOタクシー』(11月21日公開)で、人生の終活に向かうマダム役を演じる倍賞千恵子さん(84)。倍賞さんは『PLAN75』(22年)でも各映画賞の主演女優賞を戴冠しています」(同前)

 そして3人目は、世界最高峰の山として知られるエベレストに女性で世界初登頂に成功した登山家・田部井淳子の実話を元にした「てっぺんの向こうにあなたがいる」(10月31日公開)に主演の吉永小百合(80)。今後、公開に向け本人がPRにフル稼働することになるという。

 しかしながら、倍賞と吉永は大ベテランで、松もすでにベテランの域に入っている。今後の日本映画界のためにも、そんな先輩たちを脅かす俳優の台頭が期待される。

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