“辞めるなんてもったいない”はもう古い? 公務員「大転職時代」がやってくる…安定神話崩壊のリアルを当事者が明かす
「社会インフラ」としての公務員流出問題
公務員であっても自由に転職する権利がありますし、仕事内容や待遇に不満のある人はどんどん転職していいと思います。ただ、公務員はある種の社会インフラとも言えるため、地方の公務員の都市部への流出や、優秀な国家公務員の転職がどんどん増えると、それは行政サービスの質の低下を招いてしまいます。
モノではなく、ヒト由来の行政サービスの質の低下が、今後ますます進んでいくことが予想されるのです。例えば、役所に行っても職員と全然話が通じないとか、補助金の申請をしたのに手続きミスで受け取れなかったとか、逆に役所のミスで税金を多く取られてしまったとか、そういう現象がどんどん増えていきます。
霞が関の人材流出については、より深刻な影響が予想されます。国の制度や仕組みを今の世の中にあったものにバージョンアップしていくのが官僚の大事な役割なのに、優秀な人材の流出が続くと、そうした国の政策が停滞してしまいます。
今は世の中の流れが速くなっているので、仕組みもそれに合わせて早く変えていかないといけない。それができなくなると日本全体の足を引っ張ることになります。戦後や高度経済成長期には、優秀な霞が関の官僚が日本を引っ張っていったと言われましたが、それがだんだん逆になっているという風に感じます。
公務員を「普通に解雇」できるようにするべきだ
こうした状況を改善するためには、根本的な制度改革の必要性があります。
まず、民間企業と同じぐらいには、働かない公務員や優秀でない公務員を解雇できるようにしないといけません。働かない人たちの仕事が若い優秀な人たちに押し付けられて、それに嫌気が差して辞めてしまう、というケースをなくしていかなくてはなりません。
ただ、実際には一筋縄でいかない問題の方が多いと思います。例えば霞が関の政策決定の停滞は、国会の仕組みと一緒に考えなければなりません。政策の内容は政治家の対応1つですぐに変わってしまいますし、その後ろには業界団体などの縛りも存在します。
夜遅くまで残業し、議員の質疑応答の準備に追われるのも、縛られるものが多すぎて、結局のところ「官僚には何も決められない」ことを象徴する光景だと思います。
「職場改善」と言ってもそう単純な話ではないと、みんな頭で分かっているので「ここにいても何も変わらない」という結論に至り、職場を離れていくのです――。
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