リクルート広告から外車の販売まで…“メディア化”する「ファミマ」の店舗で今何が起こっているのか

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「コンビニもずいぶん変わったなぁ」という言葉では収まらないほどの変化が、ここ数年のコンビニ業界で起こっている。特に全国1万6000ほどの店舗を構えるファミリーマートは、レジ上の「デジタルサイネージ」を中心に、人気番組とのコラボやリクルート広告、そしてついには外車の販売まで、あらゆることを行い始めた。さらにそこで得られたデータを活かし――。伊藤忠商事出身の社長が、知られざる経営の内幕を明かした。

※本稿は「週刊新潮」2025年9月11日号【経済アナリスト森永康平のビジネスリーダーにドロップキック!】の対談記事を再編集したものです。

 商品を選び終えて支払いに向かうと、レジ上に設置されている“大画面”に目を奪われるという方も少なくないのではなかろうか。いわゆる「デジタルサイネージ」は今やファミリーマートの中核事業の一つになっている。

「全国1万6000のうち、1万500の店舗にすでに導入されています。ここまでいくと、1日あたり1200万人くらいの視聴者がいる計算になります」

 そう語るのは、伊藤忠商事出身で、2021年よりファミマの社長を務める細見研介氏だ。もはや「メディア化している」ともいえる店舗には広告ニーズも高まっているようで、

「当初は、店舗に商品があるメーカーさんの広告が中心でした。シンプルな宣伝動画に加え、『ファミチキとセットで買うと100円引き』というキャンペーンなどです。それが最近は地域限定の利用が増えています。これだけ暑い日が増えたので、自治体さんが『水分をとって』と熱中症予防を地域で呼びかけるのに使われたり、あるいは地方のテレビ局さんと連携して、弁当などの新商品を開発し、実際に商品を販売するだけでなく、店内のサイネージでその番組を放送したりもしています」

 全国の消費者との密な接点を持つコンビニだからこそ、実現できる広告がたくさんあるというのだ。

「最近は、地方の工場がリクルーティングのために使用されたりと、エリアを絞った採用広告の相談も多くいただいています。あと面白いのは、車の販売。韓国の自動車メーカーであるヒョンデさんの新車をサイネージで紹介するとともに、店舗の駐車場を活用して、試乗会も開催しました。1カ月くらい、首都圏を中心にした一部店舗でのキャンペーンでしたが、予想を上回る台数が売れたと聞いています」

 所得の多寡にかかわらず“誰もが訪れる”のがコンビニだ。当然その中には高所得者層もいるわけで、車を売るということも理にかなっているというわけか。

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