先輩の恋人への仕打ちがひどすぎる 浮気しまくり、DV…挙句「お前にやるよ」と言われた僕と彼女の奇妙な関係
彼女を大事にしない先輩
先輩と紗織さんは、数年間は仲睦まじく暮らしていた。紗織さんもアルバイトをしていたが、まじめな勤務態度から正社員にならないかと声をかけられたこともあった。ただ、先輩との生活を大事にしたかった紗織さんは、彼に尽くすことが最優先だった。
「30歳を機に先輩は会社員をやめて独立、仕事がうまくいくようになったあたりから彼女に冷たく当たるようになったんです。少しお金をもったからでしょうか、浮気し放題で、彼女はいつも泣いてた。僕はふたりとはそれほど頻繁に会っていたわけじゃないけど、さすがに心配になった。というのも、久しぶりに先輩と飲んでいるとき、彼がひどく酔ったんですよ。それで紗織を迎えに来させろということになって。迎えに来た紗織に、先輩は『遅いんだよ、おまえは』と頭を平手打ちしているのを見たから。後日、『別れたほうがいいんじゃないかな』と言ったんだけど、彼女は聞く耳をもたなかった。よほど彼のことが好きだったんでしょうね」
先輩に意見したこともある。だが、その先輩の実家は、京輔さんの実家と仕事でつながっていた。父親が経営する工場が傾いたとき、真っ先に助けてくれたのが先輩の父だった。先輩もそのことを知っていたが、特に京輔さんに対して「兄貴分」のようにふるまうことはなかった。だから彼は先輩にいつも感謝していたし、そういう関係があったからこそ、意見しても厳しい言葉は使えなかった。恩義のある先輩と、先輩に虐げられている彼女との間で苦悩していたのだという。
「紗織がかわいそうだよと言うくらいしかできなかった。あるとき、先輩が『オレ、結婚することにした』というので、てっきり紗織とだと思ったら別の女性だった。紗織が出ていかないから、なんとかしてくれないかと言われたときは殴ってやろうかと思ったけど、どうしても僕にはできなかった。思い出すたび心の中が苦くなる。勇気がなかった。彼女のために何もできなかった自分が恥ずかしい」
「このときこそ殴るべきだった」先輩の一言
傷心の紗織さんを自分のアパートに連れてきた。このまま郷里に返すわけにもいかないし、放り出すわけにもいかない、なんとか彼女に立ち直ってもらいたかった。
「その後、彼女が妊娠していることがわかった。もちろん先輩の子です。僕が先輩に伝えました。すると先輩は『悪いけど、これでなんとかしてやって』と30万ほど寄越しました。それいいんですかと言ったら、『紗織、おまえにやるよ』って。このときこそ殴るべきだったと今でも思う……。でも『僕が一緒に行くよ、病院に』としか紗織に言えなかった。彼女は『私は産む』と言い張って。そうなるのはわかっていたけど、実際に彼の子を愛せるのか、育てられるのかを考えたほうがいい。ここは現実を見ようと説得するしかなかった。そのときも自分の無力さを呪いました」
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