「日本で力士になりたい」 ウクライナ出身の21歳「安青錦」、初土俵から2年足らずで幕内優勝争いに絡んだ若き才能【令和の名力士たち】
初土俵から止まらない勢い
2023年秋場所、初土俵を踏んだダーニャの四股名は、「安青錦」に決まった。
安治川部屋、師匠の四股名・安美錦から、「安」、母国・ウクライナを現
す「青」色、そして、師匠の「錦」を受け継いだ四股名である。
序ノ口デビューの九州場所、いきなり優勝。翌年初場所も、序二段優勝を飾る。夏場所には早くも幕下に上がり、3場所連続6勝1敗という好成績を収め、2024年九州場所で新十両昇進を決める。
勢いは止まらなかった。
十両を2場所で通過した安青錦は、2025年春場所、初土俵から史上最速タイ(10場所)で新入幕を果たす。そして、この場所では、14日目に幕内最高優勝経験者・尊富士を、さらに千秋楽に関脇・王鵬を下すなどの活躍を見せて、11勝を上げた。基本的に三役以上の力士からなる「これより三役」の土俵入りにも、新入幕ながら登場した。
「新入幕で、こういう経験ができてよかったです。勝てたことは自信になりました」
と、謙虚に話した安青錦。
また、この日は安青錦の21歳の誕生日とも重なった。
「三賞(受賞)は目標だったので、うれしい。自分へのよいプレゼントになりました」
低い体勢と細かい技で相手を翻弄
翌夏場所、前頭9枚目まで番付を上げた安青錦は、初日、金峰山に敗れたものの、2日目から8連勝で勝ち越し。前傾姿勢から低く攻めていくという相撲に、幕内力士はタジタジだ。
勝ち越しを決めた9日目の対戦相手で、ベテランの千代翔馬も、
「(立ち合いの)当たりはそうでもなかったけど、どんどん相手の体勢が低くなっていくんだよ。自分は十数年相撲を取っているけれど、珍しいタイプだね」
と、安青錦の特異な相撲に驚いた様子を見せた。
低い体勢に加えて、レスリング仕込みの多彩で細かい技も、安青錦の武器だ。名古屋場所では、内無双で2勝しているが、
「その他にも、まだ出していない技があるんです」
と、言うのだから上位陣も気が抜けない。
新三役(小結)で迎える秋場所に関しては、
「これまで以上の成績を残したいです。もちろん、今の地位(三役)で満足しているわけではありません」
と、意欲を語る安青錦。秋場所も「台風の目」になることは間違いない。




