アインシュタイン稲田に濡れ衣を着せた“犯人”は誰か 暴露系アカウントが「被害者の受け皿」になってしまった恐ろしさ
コレコレ配信が築いた「告発フォーマット」の定着 オールドメディアの影響力と反比例して高まる配信者への「信頼感」
こうした構図を決定付けたのが、暴露系配信者・コレコレ氏の存在だ。200万人を超えるチャンネル登録者数を持ち、その影響力は大きい。また彼の配信は、単なるうわさ話ではなく「当事者が出演し、自ら内幕を語る」というフォーマットを定着させた。内縁の妻が出演したことで明らかになった、人気2.5次元アイドルのすとぷり・ななもり氏の不倫。被害女性からの相談で発覚した、人気YouTuber・ワタナベマホト氏(事件を受けて引退)の脅迫事件。紅白にも出演したアーティスト・まふまふ氏は、元妻とのトラブルが週刊誌に掲載された際、最終的に自らの言葉で答える場として選んだのはテレビや週刊誌ではなくコレコレ氏の配信だった。これは視聴者だけでなく、送り手側のタレントや関係者からも「一定の信頼」を勝ち取っていたことを示している。
今回の稲田さんの件に関しても、被害女性がコレコレ氏に相談を持ち込んだことで急速に拡散。稲田さん本人は「全く身に覚えがないし、企画を装って変なうそついてまであんなことはしません」とまで言い切ったにもかかわらず、「コレコレ氏サイドの情報の方が真相に近い」と誤解されてしまった側面が否めない。
また「アカウント乗っ取り」という言い訳が、多くの「誤爆」「裏アカ流出」疑惑のあったタレントたちを救ってきたということもある。彼ら彼女らの話の真偽をマスメディアが追及することもなく、うやむやになっていくのを見ていれば、配信者の方が真実を明らかにする気概も能力も長けていると思う視聴者だって出てくるだろう。いつものタレントの言い訳、それをうのみにするいつものメディアのお約束。そうした空気がSNSに充満し、稲田さんに濡れ衣を着せる動きにつながっていってしまった。
芸人・粗品の反応が映す「炎上」のエンタメ化と日常化 笑いの舞台裏をも直撃するSNSリスク
アカウント乗っ取り犯が逮捕され、稲田さんの身の潔白はようやく証明されることとなった。そしてコレコレ氏は今回の騒動の責任を取る形で、稲田さんに謝罪の上SNS活動を停止する旨を発表。ただその際、今回の炎上に「加担」した存在としてお笑いコンビ・霜降り明星の粗品さんの名前を挙げている。
粗品さんが稲田さんを巡る騒動につき、「1人賛否」として皮肉や揶揄を交えながら自身の配信で取り上げたのは事実だ。真犯人が逮捕後も、「あの人女の子が好きだし、乗っ取られたとはいえ、その状態でDMを考えて送ったのは稲田さん本人では?」などの発言がネット上の拡散に拍車をかけた。もともと粗品さんは歯に衣着せぬ物言いで炎上を恐れないスタイルを貫いており、今回も稲田さんのトラブルを面白いネタ扱いした「通常運転」にも見える。これが一部のファンには痛快に映る一方、稲田さんと同業界の人間による発信ということで、疑惑を強める呼び水にもなってしまった。
芸人同士の軽口や舞台裏のやりとりまでも、SNSを通じて増幅される時代。オールドメディアが情報を吟味して発信する猶予はなく、SNSという舞台で生身の人物像が瞬時にさらされていく。炎上が日常化する中で、当事者や周囲の芸人たちは「どこまで冗談で済まされるのか」という新しい境界線を探り続けることになるだろう。
稲田さんのアカウント乗っ取りは、個人の被害にとどまらず、SNS空間が告発・検証・炎上の舞台となる現代の構造を浮き彫りにした。スキャンダルは「まずSNSへ」という風潮、コレコレ氏らが築いた「被害者出演型の告発フォーマット」、そして芸人たちの軽口すら炎上の燃料に変わる文化。オールドメディアが後追いするしかなくなった現状で、笑いの舞台裏をも直撃するSNSリスクは、今後ますます芸能界の表と裏を揺さぶり続けるだろう。





