昨季の“失策王”が今季はGG賞候補に…「佐藤輝明」覚醒の秘訣は「守備強化」 飛躍の裏に「藤川監督」と「下柳グラブ叩きつけ事件」のコーチが

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「下柳叩きつけ事件」のコーチ

 昨年5月、佐藤はバント処理に失敗、そのエラーが逆転負けに繋がり、岡田監督の逆鱗に触れて二軍降格となっている。ここで出会ったのが、当時の二軍内野守備担当・田中秀太コーチである。田中コーチは阪神一筋で、現役時代は、内野3ポジィションと外野をこなすユーティリティプレーヤー「秀太」として活躍した。秀太と言えば有名なのは、「下柳グラブ叩きつけ事件」である。現役時代の2007年、鳥谷敬の代役として遊撃の守備についていた秀太は、打球処理でミスを連発。下柳剛投手が激怒し、マウンドにグラブを叩きつけたシーンは、2000年代NPBを代表する珍プレーとして広く知られている。それだけに、守備で叱責される選手の気持ちが理解できるのか、佐藤に親身に寄り添ったという。

「キャッチングの基礎を見直した上に、身体能力に優れた佐藤にとっては簡単にできてしまうジャンピングスローを封印するよう、アドバイスしました。実は昨季の佐藤の失策数の半分以上は悪送球だった。まずは基本に戻れという指導でした」(同)

 その後、佐藤は6月には一軍復帰したが、田中コーチの指導に感謝していたという。こうした関係もあり、藤川監督は、今季から田中コーチを一軍守備走塁コーチに配置転換。田中コーチが常時一軍に帯同できる環境を作り、佐藤の守備力の再生を図ろうとした。今季は試合前に、田中コーチが佐藤に向けて手投げで緩いショートバウンドを投げる練習を課すのがルーティンになっていたという。

「さらには、現役時代に三塁手で、今季から指導陣に加入した小谷野栄一打撃チーフコーチにも“三塁・サトテル”の再生を指示。チーム全体で佐藤の守備を洗い直しました」(同)

毎日特守

 佐藤本人も「エラーを減らしたい。やり直したい」と意欲的で、昨年まで使っていた三塁手用グラブを変更。これまでは小指部分に薬指と小指を入れていた型式だったが、

「今季からしっかり5本指を独立させる形で、ボールの取りやすさに特化した特注グラブに変更しています。また、ノックを受けるだけでなく毎日特守を繰り返した」(同)

 今年、藤川監督がチームに課した方針は「凡事徹底」だが、佐藤は見事、その推進役になった。今季のエラーはここまでわずか5。

「失策数が一桁ですから、ゴールデングラブ賞のチャンスは十分にあります。内野が土でイレギュラーしやすい甲子園でこの数字ですからね。脅威のレベルアップでした」(同)

 こうした守備面での向上が打撃にも好影響を与えたのは間違いない。

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