安過ぎる牛丼はいつまで「ワンコイン」を維持できる? 「インバウンドの人たちはあまりの安さに目を丸くする」

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 インフレ真っ最中の今日にあって、牛丼チェーン店「すき家」が9月4日から牛丼をはじめ36品目で値下げを断行するという発表が、業界に衝撃を与えている。すき家といえば、今年3月にネズミとゴキブリの異物混入が相次いで報道されたことも記憶に新しいが、そもそも「安過ぎる」牛丼をこのタイミングで値下げする真意とは。

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 懐を直撃するニュースは枚挙にいとまがない。今月からは調理用の油や、醤油、マヨネーズといった調味料など、ずばり1000品目以上の値段が上がるから、誰しもため息のひとつもつきたくなる。

 そこへ飛び込んできたのが、あっと驚く値下げの報である。「すき家」の牛丼並盛が30円安く450円になるなど、36品目で10~40円の下げ幅だという。

 実に11年ぶりとなる値下げに踏み切った、すき家を運営するゼンショーホールディングスの担当者によれば、

「牛丼の原材料となる牛肉、タマネギ、米はここ2~3年で急激に値上がりしており、当社もコロナ以降、値上げせざるを得ない状況が続いていました。しかし、このタイミングで値下げをすることで、価格優位性を上げてお客さんを増やし、ひいては牛丼の販売量を増やすことで利益を確保する決定をしました」

牛丼屋に行って目を丸くする観光客

 この値下げがショッキングなのは、そもそも牛丼並盛が安過ぎるから。値下げ前でも「すき家」の牛丼並盛は480円、「吉野家」は498円、「松屋」は460円と、いずれもワンコインでおつりがくる。コンビニで200円を超えるおにぎりが珍しくない時節柄、驚異的ではあるまいか。

「今世紀に入ってすぐ、デフレ経済を背景に牛丼大手3社は並盛280~290円と破格の値段を設定していました」

 とは、経済誌記者。

「その後、2004年に各社はBSE問題で牛丼の販売を停止します。最初に復活したのは『すき家』で、値段は350円。以降、各社は200円台後半から300円台後半を行き来しながら、21年に『吉野家』が400円台に突入しました。ここ10年で、ざっと100円しか値上がりしていない状況です」(同)

 やはり、このお値段には、

「日本の物価高騰にビクともしないインバウンドの人たちは、牛丼屋に行くと目を丸くします。母国で同じレベルの食事をするなら、2000~3000円はするはずだと口をそろえていますね」(同)

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