トランプ氏が「日本からの投資」を強制する可能性は…数字が示す米国の景気後退、政策の非を認めなければ日本に無茶ぶりも

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気がかりなのは日米関税合意の覚書

 皮肉にもトランプ関税が米国製造業の足を引っ張る構図が鮮明になっている。

 米サプライマネジメント協会(ISM)が2日に発表した8月の米製造業景況感指数は48.7と、好不況の境目である50を6カ月連続で下回った。ISMは「関税政策の不透明感などが主な要因だ」としている。

 トランプ政権は関税合意の際に日本や欧州連合(EU)などから合計1兆5000億ドル(約222兆円)の投資の約束を取り付けたが、米国経済が不振となれば、これが「空手形」に終わる可能性は十分にある。

 気がかりなのは、4日に発表された日米関税合意の覚書について、ラトニック商務長官が示した見解だ。ラトニック氏は5日、覚書に盛り込まれた5500億ドル(約81兆円)の対米投資の行き先は、トランプ氏に「完全な裁量権」が与えられているとした。

 トランプ氏は自身の政策の非を認めるのではなく、関税の再引き上げなどを主張して、日本からの投資を強制するのではないかとの不安が頭をよぎる。

 残念ながら、日本経済は今後もトランプ氏の言動に振り回されるのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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