トランプ氏が「日本からの投資」を強制する可能性は…数字が示す米国の景気後退、政策の非を認めなければ日本に無茶ぶりも

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命がけで仕事にしがみつく従業員

 米国経済のリセッション(景気後退)入りが現実味を増している。

 米労働省が9月5日に発表した8月の雇用統計によれば、失業率は4.3%と前月の4.2%から上昇し、約4年ぶりの高水準となった。

 非農業部門の雇用者数は前月比2万2000人増と、市場予想の7万5000人増を大幅に下回った。6月の雇用者数も下方修正され、当初の1万4000人増から1万3000人減となった。雇用者数の減少は新型コロナ禍の2020年12月以来のことだ。

 雇用環境はさらに悪化する可能性があると言わざるを得ない。米国の就職再支援会社チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスは4日、企業の8月の新規採用計画は2009年の集計開始以降で同月として最低を記録したと発表した。

 政府の統計以上に現場の雇用環境は悪化しているようだ。

 米コンサルティング企業コーン・フェリーは、“ジョブハギング”する従業員の増加を指摘した。“ジョブハギング”とは命がけで職に執着することを意味する。経営者がリストラを計画する中、従業員は生き残りのために仕事にしがみついているというわけだ。

 コロナ禍の米国で自発的な離職が急増する、いわゆる「大退職時代」が到来したと言われたが、ここに来てまったく逆の現象が起き始めている。

雇用環境の悪化と個人消費の減速

 米雇用情報提供企業グラスドアの従業員信頼度指数にも同様の傾向が出ている。最新の調査によれば、従業員の職場でのセンチメント(印象、心理状態)は失業率が14.8%に達した2020年よりも悪化していることが明らかになった。

 雇用環境の悪化が災いして個人消費が減速していることも気になるところだ。

 プライスウォーターハウスクーパースは3日、ホリデーシーズン(クリスマスから年末年始)に関する見通しを発表した。同社の調査によれば、今年の1人当たりの平均支出予定額は1552ドル(約23万円)で、前年比5.3%減の減少幅は2020年以降で最大となる見込みだ。世代ごとでは17~28歳のZ世代が23%減となった。

 トランプ政権が実施している不法移民の取り締まりも、個人消費にとってマイナスだ。

 米ピュー・リサーチセンターの分析によれば、1月から7月末までに米雇用市場から退出した移民は120万人以上だという。これによる移民の購買力の縮小が、米国の個人消費の下押し圧力になることは間違いないだろう。

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