トランプ氏が「日本からの投資」を強制する可能性は…数字が示す米国の景気後退、政策の非を認めなければ日本に無茶ぶりも

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インフレという形で米国民にしわ寄せ

 トランプ関税も個人消費にとって重荷だ。

 FRBが3日に公表した米地区連銀経済報告(ベージュブック)では、「関税が原材料費を押し上げた」との報告が目立った。

 ベッセント財務長官が8月末、関税収入が年間5000億ドル(約74兆円)を超える可能性があるとの見通しを示したように、トランプ関税には米政府の財政赤字を大幅に減らす効果がある。しかし、インフレという形で負担を背負わされるのは米国民だ。

 8月の雇用統計を受けて、米連邦準備理事会(FRB)の9月の利下げは「確実」との見方が広がる一方、FRBの利下げが経済の悪化に追いつかなくなるのではないかとの懸念も生まれている。

 だが、ベッセント氏は米国経済に関する強気の見通しを崩していない。同氏は7日、NBCテレビのインタビューで、8月の雇用統計は「ノイズ(雑音)」との認識を示し、「企業の設備投資拡大などで米国の雇用は今後増加する」と強調した。

韓国企業が不法移民に頼らざるを得ないワケ

 トランプ政権は、関税引き上げにより米国の製造業が復活すると豪語しているが、このような動きはほとんど起きていないのが実情だ。

 米政治ニュースメディア・ポリティコは8月31日、多くの米企業が中国から撤退せずにとどまっていると報じた。米国が生産拠点に適していないため、中国で踏みとどまる方がリスクは少ないと考えているからだ。

 米国は先進国で最も経済のサービス化が進んでいる。そんな米国で「再工業化」を実現させることは「言うは易し、行うは難し」だ。工業大国だった1950年代の米国を復活させるためには人材の育成などが不可欠であり、関税の引き上げだけでは不可能だ。

 ジョージア州で5日、韓国企業の電気自動車(EV)用バッテリー工場で韓国からの不法移民が大量に摘発された背景には、米国の労働者の低い熟練度があった。ビザの取得が困難な状況のため、韓国企業はやむなくビザなしで自国の労働力に頼らざるを得なかったのだ。

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