連れ子の娘はかわいいけれど…「僕との子ども」は拒む妻 引き出しに隠されていたモノに46歳夫は打ちのめされた

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ピアノを習いに、レッスン代は前夫もち

「その晩、妻から『娘がピアニストになりたいと言ってる。前夫に言ったら、有名なピアニストを知っているから習いに行ったらどうかと言われた』と相談されたんです。そんな有名な先生に習うのはたぶん、ものすごくお金もかかるだろうと言ったら、それは前夫が出してくれることになっていると。僕としては、いや、僕が出すと言いたいところだけどとても無理。前夫は音楽関係の仕事をしている人だから、娘に才能がないわけではないのかもしれないし、何よりやりたいことをやらせてやりたい。それでいいんじゃないのと言いました。そう言うしかなかった」

 娘の才能に、妻は以前から気づいていたのだろう。いつか娘は著名なピアニストになるかもしれない。僕の子どもに手間をかけるより、娘だけに集中したかったのではないか。啓輔さんはそう考えた。そうなると自分はただの生活費運搬係なのか……。

「『あなたが鷹揚な人でよかった。愛してる』と妻は満面の笑みを浮かべていました。オレってお人よしだよなと思いながらも、この妻と今の娘を大事にしていくしかないとも思った。前夫より精神的に大きな存在になれるようがんばろうとも思いました」

 美知代さんが離婚したのは前夫の度重なる不倫が原因だ。だからこそ、「あなたは不倫なんてしないでね」と結婚するとき何度も念を押された。夫の不倫を知ったとき、どれほどショックを受けたか、どれだけ傷ついたかも詳細に聞かされている。

 それは心に刻み込んだが、著名なピアニストに習い始めてみると、毎週のように週末のどちらか妻と娘は1日中いない。先生の家まで2時間かかるので通うのも大変なのだ。

「土日のどちらかは娘を遊びに連れていこうと思っても、娘が乗ってこない。妻も『プロになるなら1日8時間くらいは練習しないと』と娘の尻を叩き始めた。あなたはそもそも出遅れているんだからとも言ってましたね。もとは前夫が娘にピアノを習わせたそうです。でも離婚後、生活が不安定なスナック勤めのころは、ほとんどピアノの練習もできなかった。再婚してようやく思う存分、練習できるようになったということでしょう。やっぱり僕は利用されているのかもしれないと思いましたが、今さらどうにもできなかった」

娘が不憫で

 妻の叱咤激励があって、娘は2年後の発表会で大きな成果をおさめた。先生も今後はコンクールに出るといいと言ってくれたとふたりは大喜びだった。だが、10歳になった娘はどこか不健康に見えた。

「寝食を忘れてピアノに打ち込む娘がなんだか不憫で……。本人がやりたいと言っているのだからと妻は言うけど、本当にそうなんだろうか。妻と先生がよってたかって、娘という商品を作り上げようとしているんじゃないか。僕はそう思っていました。やらされている、あるいはやらないとおかあさんが困る、だからという気持ちが娘にはあると思った」

 娘に何度も「無理しちゃダメだよ。身体を壊したらなにもできないんだから」と言ったが、「啓ちゃん、私は大丈夫。それよりおかあさんと仲よくしてよね」と諭されるのがオチだった。ところが啓輔さんの予感は当たってしまった。12歳になったばかりの娘がある日突然、倒れたのだ。過労と栄養失調だった。子どもの病名ではないと啓輔さんは憤った。明らかに睡眠と食事が足りていなかった。

 もう妻には任せておけない。啓輔さんは動き出した。

 ***

 “血の繋がり”を超えて、娘さんのために行動を起こした啓輔さん。だがそれによって、思わぬ真実が陽の下に晒されることに……。【記事後編】で詳しく紹介している。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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