「海自スパイ事件」で“ロシアが欲しがった情報”とは マスコミ大騒ぎでも実は「極秘でも何でもなかった」理由
専門家たちも「極秘でも何でもない」と
軍事アナリストの小川和久氏に解説してもらうと、
「極東情勢の分析資料なんかも、それほど重要情報はないと思います。極東で重要なのは北朝鮮問題で、ミサイル『ノドン』の配備などのリアルタイムの動きですが、そもそもこれは日本独自で入手する術がない。米国に頼り切りです。だから最重要情報ですが、こんな米国からの直接の情報をAの立場で入手すること自体が不可能。また、自衛隊の指揮命令系統の組織図は指揮官の住所から携帯電話番号、カウンターパートの米軍担当者名にいたるまで記載されている。しかし、この手の名簿なら私でも持っており、本来は極秘でも何でもありません」
最も心配なのは、Aが勤務した経験のある潜水艦に関する情報漏洩ともいわれるが、元陸上自衛隊北部方面総監の志方俊之帝京大教授が話す。
「それほど心配する必要なんてありません。彼が渡した自衛隊の幹部名簿なんて官報に載っているのに毛が生えた程度。ロシアのスパイは、まず日本の対象者と接触する際には何でもいいから資料を欲しがる。“日本の勉強をしたいから”と言って、単なるパンフレットのようなものでも喜んでもらうもんなんです。状況から見ると、まだまだその程度の段階だと思います」
大騒ぎするほどの問題ではないというのだ。
金銭を受け取ったきっかけは香典
おまけに、先の警視庁公安担当者はこんな話を打ち明ける。
「実は、防衛庁もAの情報漏洩は少なくとも今年1月には、捜査当局から内偵捜査を知らされているのです。この3月に彼を閑職に異動させたのも、捜査本部との合意事項。つまり防衛庁の組織防衛をし、泳がせてきた。むろん、重大な機密漏洩がありえないことがわかっているからできたことなんです」
そのAがボガテンコフから金銭を受け取ったきっかけは、昨年3月に家族を病で失ったことだった。
「香典として10万円を受け取り、その後5回ほど密会を重ねたが、その度に金を受け取るようになったのです。それらの合計が30数万円。4月以降に20数万円をもらっています」(社会部記者)
それにしても、スパイの情報提供料が30数万円とは安く見られたもの。10万円の香典を除けば、4月以降の情報提供料は1回あたり5~6万円で、単純に均すと、わずか3万円程度なのである。しかも、その密会場所がごく庶民的な居酒屋やバーというから、お手軽なもの。
[2/3ページ]

