黒澤明監督の「民家の屋根を外せ!」発言は本当か 妥協を嫌った日本の巨匠は宮崎アニメで「すごく泣いちゃった」ほどナイーブだった
宮崎アニメを見て「すごく泣いちゃった」
黒澤監督が映画作りにあたり、凝りに凝るのは、「純真だから」と言うのは、監督の長女、黒澤和子さん(55)。晩年の作品「夢」(90年)から衣装担当として参加した。
「父は宮崎駿さんのアニメ『魔女の宅急便』を見て目を腫らして“すごく泣いちゃったんだ。身につまされたよ”と語るぐらいナイーブな人でした。外では強く映ったかもしれませんが、芯の所では人間臭くて一直線なんです。映画の撮影の時も、子供が欲しいものを手に入れるために駄々をこねるのと同じに、必死で自分の欲しい映像を追い求める一生懸命な姿が、スタッフを動かしました」
「夢」ではこんなことがあったという。
「シーンの中に狐の嫁入りがありましたが、狐の顔が出来上がるまで半年もかかったんです。最初はお面でやろうということで、色々試したのですが、どうもイメージに合わない。そこで人の顔が透けて見えるプラスチックのお面を作ってみた。これは父のお気に召したのですが、いざ撮影をしてみると、光ってしまう。
結局、人の顔に毛を植えてメーキャップの技術を駆使し、何回もメークテストをして、ようやく完成した。お金と時間をかけて、一つの狐を作り上げたんです」
あの幻想的な狐の嫁入りのシーンは、そうやって作り上げられたわけだ。
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監督が「あの場面は一生忘れないな」と――。第2回【「七人の侍」焼き討ちシーンは「燃えすぎ」「眉も髷も全部焼けた」…黒澤明監督も「一生忘れない」と言った大混乱の現場、出演者が明かした一部始終】では、伝説の中でも特にスケールが大きいエピソードについて、俳優の土屋嘉男さんがすべてを明かしている。





