バツイチ独身サラリーマンが定年間近に計画した“無謀すぎる”不動産経営とは 不動産屋のひとりごと「バブルを謳歌したキリギリスたち」

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【前後編の後編/前編を読む】「老後は海の近くで暮らしたい」の夢が砕かれた“賃貸派”61歳女性の大誤算

 平成末期から不動産事情を見つめてきたライター兼宅地建物取引士のM・M氏。同業者との最近の話題はもっぱら“バブル世代の珍トラブル”だとか…。今回は、気持ちばかりはバブルだけど実態が伴わなかった、とある男性が登場する。

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 最近、不動産投資家YouTuberのサクセスストーリーが目につきます。サラリーマン時代にアパートを一棟買い、安定収入を得る。すると地味なサラリーマンなのに一気に年収は1,000万円を超え、30代でFIRE――。こんな話に騙されるのは世の中を知らない若者だけかと思いきや、定年を前に賃貸経営を考え始めるバブル世代の“浮世離れした相談”も不動産業界あるあるです。

 バブル世代の方は、早くに家庭を持ち、マンションを購入して定年を迎え、悠々自適のリタイヤ生活を送る人が多い。バブル当時に購入したマンションは資産価値が高まり、ビンテージマンションとなって、資産価値が上がっていることも。バブル期のマンションは作りが贅沢でしっかりしているので今でも価値が高く「何をやっても勝ち組」なのがバブル世代というイメージが強いかもしれません。ところが、“雰囲気だけバブル”なキリギリスさんも少数派でおりまして…投資用物件専門の不動産会社で働く友達に会うと、珍客のグチが始まります。

「この前さ、マンション経営やりたいっていうから会いに行ったらさ、59歳で貯金が1,000万ちょい。もう定年まで1年もないのに、自分にいかほどの価値があると思っているんだろうね。だからバブル世代は……」

 お客さん的には“大手企業の社員という肩書で銀行から融資してもらえる”という算段でしたが、ローンにはその人が定年までにどのくらい働けるかで算出するので、残り少ない在籍期間ではレバレッジがきかない。ローンも組んだことないのに漠然と賃貸経営しようとする無謀さは根拠のない自信からくるようです。

 さらにこの方、バツイチ独身。子供も大きくなったところで、奥さんから捨てられたそうで、大手にお勤めの割に貯金が少ないのは養育費のせい。不動産屋の友達曰く

「投資物件でも住宅ローンと同じ低金利で借りられると思っていたんだから驚いた。それで若い子見つけて再婚したいって。家も女もお金があれば別だけど、お金もないんじゃ話にならないよ。子育ても全部奥さんがやっていたんだろうね。あれじゃ愛想つかされても仕方ない」

 住宅ローンは、皆が持ち家を買えるよう作られた制度で、投資には適用されません。“定年で退職金をもらってから三行半”という話はよく聞きますが、奥さんが定年前に捨てるのは、それ相当の理由があるのでしょう。というか今後、成長が見込めるとはいえないですから、損切りした奥さんが正解でしょう。

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