「1918年の米騒動」と驚くほど似た状況… 当時の大臣も「農政と縁遠く、犯人探しに躍起に」 農家からは「水田が完全に干上がった」と悲鳴
「農家さんや関係する業者に大打撃」
今年の異常気象は、コメ相場に影響を与える可能性があると懸念を示すのは、新潟大学農学部作物学研究室の山崎将紀教授である。
「7月の新潟市の平均気温は平年より3.7℃も高い28.6℃でした。激しい天候はイネにも悪影響を及ぼします。暑いと人間は呼吸量が増えるように、イネも高温下では同じ状況になります。そうなると、土壌に施された肥料を食い尽くしてしまう。その結果コメのでんぷんの詰まりが悪くなって、玄米が白く濁った『白未熟粒』と呼ばれる状態になります」
この状態が多発すると、精米時にコメが割れやすくなってしまうという。
「割れたコメは捨てることになりますから、通常30キロの玄米から27キロの精米が得られるところ、さらにこの量より減るなど歩留まり率が悪くなる。結果的に売れる部分が少なくなり、農家さんや関係する業者には大打撃となってしまいます」(同)
気象庁の長期予報では、コメどころの収穫期である10月まで高温状態が続くとされている。各地でコメの収穫が終わるまで不安は尽きないが、コメ問題に詳しい宇都宮大学農学部の小川真如(まさゆき)助教はこう指摘する。
「コメの出来というのは精米してみないと分からないところがあります。一昨年と昨年も精米の結果が出るまでは豊作だろうといわれていましたが、今にまで続く『令和の米騒動』が起きてしまいました」
1918年の米騒動との共通点
時代こそ違うが、今回の状況は富山の騒動に端を発した「1918年米騒動」と似通っているとして、小川助教が続けて話す。
「食糧管理法が廃止された現代と同じく、大正時代もコメは自由取引で、米価が1年で2倍にまで膨れ上がり、米屋などの打ち壊しが全国で多発しました。時の農商務大臣は検事上がりで司法が専門の人物。高騰の原因は相場師だと片っ端から逮捕したのですが、そんなことをしても米価は下がらない。そう世間からあざ笑われた。実際、その後も相場師がいようといまいと米価は上がり続けた。令和の世も農政と距離があった小泉さんが農相となって、卸やJA、農水省の批判など、犯人探しに躍起になって対策を打っていますが、状況は打開されていませんし、コメの値段はなかなか下がりません」
見当外れの大臣のみならず、8月8日には農水省の渡辺毅事務次官が、コメ価格高騰の要因を検証した結果、「コメが足りている」との誤った認識で行政を進めていたと謝罪。コメの供給が不足していたことを認めたのだ。同日に小泉氏も、「令和の米騒動をつくった一端は間違いなく農水省にある」と謝罪に追い込まれた。
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