高校野球を襲う酷暑に「甲子園のドーム化」を望む声も…元プロ投手の大学教授が「夏の高校野球は札幌ドームで開催」を勧める理由

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 夏の全国高校野球は8月23日、沖縄尚学が優勝して幕を閉じた。今年も日本全国を猛暑が襲っているが、甲子園も例外ではなかった。大会は5日から始まり、試合が行われた15日のうち最高気温が35度以上の猛暑日は計10日と66・7%を占めた(註)。ネット上では以前から「甲子園の猛暑・熱中症対策は問題だらけ」と批判されてきたが、今年はさらに“甲子園のドーム化”という新しい論点が加わったようだ。

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 担当記者は「甲子園の猛暑・熱中症対策に関する議論は高校野球だけが対象ではありません」と言う。

「プロ野球・阪神の選手もかわいそうだと同情の声が出ています。セ・リーグはヤクルト、DeNA、阪神、広島の4球団が屋外球場です。最近は梅雨が短く、6月から猛暑が始まります。阪神は8月から夏の高校野球が始まるため“死のロード”を迎えますが、今シーズンは7月の日程のほうが不安視されました。7月は全部で23試合が組まれ、そのうち甲子園で14試合、横浜スタジアムで3試合、マツダスタジアムで3試合と、試合の86%が屋外球場での開催という予定だったのです。ちなみに7月17日の中日戦が雨で中止になった時は、XなどのSNSは安堵する阪神ファンの声が目立ちました」

 実は、6月17日に開かれた、阪神タイガースの親会社にあたる阪急阪神ホールディングスの株主総会でも、1人の株主が「なぜ甲子園をドーム化しないのか」と質問している。

 株主は選手だけでなく、観客にも猛暑で健康被害が生じると指摘した。しかし役員は「敷地面の制約があり、屋根を付けるのは難しい」と回答。この質疑応答を新聞やテレビが報じた。

 6月に株主総会が開かれ、7月に阪神が屋外球場で戦い続け、そして8月に高校野球が開幕した。

7回制に対する批判

「高校野球が始まると朝夕2部制、タイブレーク制、7回制の検討、応援団の熱中症被害などに注目が集まり、ネット上では議論が過熱しました。まず2部制ですが、今年初めて1日4試合の日でも2部制を実施しました。大会4日目の第4試合は滋賀の綾羽高校と高知中央高校が対戦しましたが、試合が終了したのは午後10時46分。一応、午後10時を過ぎるとイニングの裏で中止、継続試合として翌日に再開というルールはありました。ところが甲子園で宿泊せず、地元にとんぼ返りという日程の応援団も珍しくないため、『継続試合は困る』という高校は、もともと少なくなかったのです」(同・記者)

 綾羽・高知戦は午後10時半ごろに9回裏が終わり、同点のためタイブレークが始まるというタイミングだった。そのため両チームの了承も得た上で試合続行が決定し、午後11時近くまで熱戦が続くという異例の展開になったのだ。しかし、これにはネット上で「高校生がスポーツをする時間帯ではない」という批判が殺到した。

「タイブレークは以前から『腑に落ちない決着方法』、『延長戦よりタイブレークのほうが負けた高校がかわいそうに思える』、などと批判されてきました。さらに高野連は暑さ対策や、関係者の働き方改革の一環として7回制の検討を続けています。5月には高校野球の関係者だけでなく、一般からも意見を募集することを発表しました。2部制やタイブレーク制でさえ違和感を覚える高校野球ファンは少なくありません。そのため7回制となるとSNS上では『もうこれ以上、高校野球を改悪してほしくない』という悲鳴のような投稿も目立ちます」(同・記者)

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