高校野球を襲う酷暑に「甲子園のドーム化」を望む声も…元プロ投手の大学教授が「夏の高校野球は札幌ドームで開催」を勧める理由

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天然芝と土の甲子園ドーム

 さらに応援団の熱中症被害を心配する声も多い。「野球部員なら甲子園でプレーするのは猛暑でも本望だろうが、応援で連れてこられた高校生が熱中症のリスクを負うのはおかしい」という意見だ。

 夏の甲子園は抜本的な猛暑・熱中症対策が必要だと主張する高校野球ファンの中には、以前から「大阪ドームで開催してほしい」という意見が目立った。冷房の効いた空間が必要なのは選手だけでない。観客も応援団も同じだというわけだ。

「ところが最近のネット上では『甲子園のドーム化』という主張が目立ってきています。影響を与えたと考えられるのがエスコンフィールドの成功です。開閉式の屋根と外野のガラス壁を設けたことで太陽光を採り入れることができます。そのため当初は内外野とも天然芝でした。同じように採光性の高い“甲子園ドーム”を建設すれば、現在の甲子園と同じように外野は自然芝、内野は土というグラウンドを維持できます。ネット上では『技術的に不可能』という意見も目立ちますが、高機能フッ素樹脂ETFEフィルム膜材という素材が大型スタジアムの屋根に使われて注目を集めています。高透明なので自然芝を育てられますし、鉄骨に比べると非常に軽い。カタールで開催されたサッカーW杯ではハリファ国際競技場に使われました。甲子園のドーム化に使えると主張する専門家もいます」(同・記者)

甲子園の希少価値

 もし甲子園のドーム化に成功すれば、どれだけ暑くても日中に4試合を開催し、同点で9回が終わっても延長戦が可能だ。また働き方改革はいざ知らず、熱中症対策としての7回制を検討する必要はない。

 何よりも「大阪ドームで開催すると夏の高校野球は甲子園、という伝統が壊される」という懸念も一掃できるし、阪神もドームのメリットを享受できる。

 まさにいいことずくめと考えられるが、野球経営のプロはどう考えるのか。東京大学を卒業してロッテで投手としてプレー、ソフトバンクでは取締役を務めた桜美林大教授の小林至氏は「私は甲子園のドーム化はメリットが少ないと考えます」と言う。

「甲子園はプロ野球にとっても高校野球にとっても唯一無二の“聖地”です。現在のまま屋外球場として存続することに高い価値があります。もし甲子園がドーム球場に変わってしまうと『どこにでもあるドーム球場の一つ』になってしまい、稀少価値が消え去ってしまうでしょう。もちろん、ありとあらゆる猛暑対策が必要であることは言うまでもありません。例えば熱を吸収する人工芝が開発されています。これを内野に使えないか調査すべきです。さらに観客席の猛暑対策としてもミストや冷風装置の設置など、検討すべき点がたくさんあると思います」

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