「外遊から帰ってきたところ、突然拘束され…」 中国共産党幹部が“ナゾの失脚”

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日本との浅からぬ縁

 アメリカを代表する経済紙、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、中国の中枢の動向にもアンテナを張り、時折びっくりするような特ダネをスクープする。そんなWSJが、共産党中央対外連絡部長の劉建超氏(61)の身柄拘束を報じたのは、8月9日(アメリカ時間)のことだ。

 中央対外連絡部といっても一般にはなじみが薄いが、共産党の外交部門で、略して「中連部」と呼ばれる。共産党が政府を指導する中国にあっては、外交部(外務省)より格上とされる組織だ。そのトップである劉氏が7月下旬、外遊から帰ってきたところを捕まえられてしまったというのだ。

 劉氏は日本とも浅からぬ縁がある。元産経新聞中国総局の記者でジャーナリストの福島香織氏が言う。

「私が新聞記者だった頃、劉氏は外交部報道官で、何度もお会いしていました。一言で言えば、とてもスマートで紳士的な人です。当時は胡錦濤政権で、2008年の北京オリンピックに向けて中国がまい進していた時代。劉氏はオックスフォード大学にも留学しており、流ちょうな英語で外国人記者たちに対応していました。また、1985年には中国青年代表団(100人)のメンバーの一人として訪日しており、徳島県の農家にホームステイし、ミカンの収穫の手伝いをしていたとのことです」

「調査を受けている最中かもしれない」

 外交官としても何度も日本を訪れており、いうなれば、かつて西側諸国との協調路線を歩んでいた頃の中国外交を体現するような人物だ。また、習近平政権になってからも、党中央規律検査委員会の国際協力局長として“フォックスハント役(汚職で海外に逃亡した政府高官の追及役)”を担うなど、要職に就き続けた。

「そんな劉氏がなぜ拘束されたのか、WSJも具体的に言及していませんが、中連部のホームページには、今も部長として名前が出ている。何かの疑いをかけられ、調査を受けている最中なのかもしれません」(福島氏)

 一説には72歳になる王毅外相の後任候補ともいわれていた劉氏だが、最近の中連部の「力」は微妙だとの指摘もある。

「中連部の仕事は主に外国の政党との窓口・連絡役。歴史的に最も力があったのは、中国と正式な国交を結んでいない国が沢山あった頃で、今でも中連部が影響力を持っている相手国といえば北朝鮮とキューバぐらいでしょうか」(ジャーナリストの富坂聰氏)

 実は重量級ならざるポストにあって、その不在も影響は小さいという判断か。

週刊新潮 2025年8月28日号掲載

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