「創刊以来の事態では…」“誤報”連発の「読売新聞」に何が起きているのか 著名OBいわく「ナベツネ死去の影響も大きい」
石破首相退陣の号外
このところ読売は誤報と言われる記事が少なくない。たとえば、7月の参院選の3日後、読売は「石破首相退陣へ、月内にも表明する方向で調整」と号外で報じた。言うまでもないが、8月末になっても石破茂首相は辞めていない。
「あれは政治部が先走ったのでしょう。ここまで惨敗すれば間違いなし、党幹部も認めていた、と。恥ずかしい話ではありますが、今回の誤報とはちょっと異なる事例だと思います」(大谷氏)
では、昨年4月、小林製薬が紅麹サプリメント問題で揺れていたとき、取引先の社長のコメントを記事に沿うように書き換えた件はどうだろう。
「大阪社会部の主任が言ってもいないことを言ったとことにして記事にした、ケアレスミスの“誤報”ではなく確信的な“ねつ造”でした。しかも、コメントした社長が怒っているにもかかわらず、簡単な訂正で済ませようとした。そのため東京本社が大阪に乗り込んで、多くの社員の処分を決めることになりました。かつて僕が読売にいた頃は“大阪の独立”なんて言っていましたが、そんな状況ではなくなりました」(大谷氏)
さらに今年4月、加藤勝信財務相と会談した米国のベッセント財務長官が「ドル安・円高が望ましい」と述べたと読売は報じたが、後に誤りだったと訂正された。こちらは経済部の記事である。
最近になってこうしたことが相次いでいるのはなぜか。
「やっぱりナベツネさんが亡くなったことが大きいのかもしれない」(大谷氏)
長年にわたり読売新聞グループの主筆を務め、メディア界のドン、政界のフィクサーとも呼ばれた渡邉恒雄氏は昨年12月に亡くなった。
ナベツネ亡き後の読売
「存命の頃は、主筆が気に入るか気に入らないかで記事を書いていたわけです。そのナベツネさんが亡くなり、ドングリの背比べが始まった。各々が手柄を立てて出世しようという流れになり、無理が生じているのかもしれません。ちょっと残念ですね」(大谷氏)
ところで、謝罪に行って相手の名前を間違えたことはどうだろう。
「記事を出したその日のうちに編集局次長が謝罪に行くなんて、読売始まって以来のことかもしれません。それだけ泡食っていたんでしょう。とはいえ、謝りに行って相手の名前を間違えるとは、傷口を広げた結果になってしまった」(大谷氏)
その竹原編集局次長は社会部次長時代、福島第一原発事故の「吉田調書」報道を巡る朝日新聞の誤報問題について、署名入りでこう書いている。
《記者は、役所などの公式発表以外に、関係者から未公表の情報や資料の提供を受けることは珍しくない。(中略)一方で、報道に際しては、デスクや編集幹部らによるチェックを受けている。取材者には思い込みが生じやすく、第三者の目を通さなければ報道の公正性が保てないからだ。それが報道の信頼性にも結びついている》(読売新聞2014年11月13日付)
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