「創刊以来の事態では…」“誤報”連発の「読売新聞」に何が起きているのか 著名OBいわく「ナベツネ死去の影響も大きい」

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 読売新聞が8月28日の朝刊1面に謝罪・訂正記事を掲載した。この前日、読売は「公設秘書給与不正受給か 維新衆院議員 東京地検捜査」との見出しで、近々、維新議員に対して強制捜査が行われると1面トップで報じたが、事もあろうに議員の名前を《取り違えた》というのだ。この事態をどう見たか、元読売新聞記者でジャーナリストの大谷昭宏氏に聞いた。

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 読売は8月27日の朝刊1面で、日本維新の会の池下卓・衆議院議員の公設秘書が国から不正に給与を受給した疑いがあるとして、東京地検特捜部が捜査中であると報じた。ところがこの日、特捜部が家宅捜索を行ったのは同じ維新議員ながら石井章・参議院議員の自宅と事務所だった。大谷氏は言う。

「27日の朝刊のトップを見て、読売が“池下議員で抜いた”と思いました。ところが、その日の昼のニュースで石井議員の家宅捜索が早くも報じられた。検察が同時に両方やることはありませんから、誤報だったことに気づきました」

 当然ながら池下議員は事実無根と読売に猛抗議し、この日のうちに竹原興編集局次長らが大阪・高槻市にある池下議員の事務所に謝罪に訪れた。しかも、竹原編集局次長は池下議員を「タケシタさん」と呼んでしまう“取り違い”の上塗りもしたという。

 この席上で翌日の朝刊で訂正・謝罪することが約束されたのだ。その訂正・謝罪記事にはこうあった。

《取材の過程で、池下議員と石井議員を取り違えてしまいました》

誤報はまずいが…

 ちなみに、池下議員は2023年9月、自身の公設秘書として現職の市議2人を採用していたことが報じられた。国費で給与がまかなわれる公設秘書は兼職が禁じられている。ただし、衆議院議長に「兼職届」を提出すれば例外的に認められる。その届けを怠っていたため謝罪したという経緯があった。

「当時、真っ先に報じたのは毎日新聞でした。また、東京地検に最も食い込んでいるのは朝日新聞で、自民党の萩生田光一議員の政策秘書が略式起訴されるというスクープも抜いています。読売の地検担当にはそうした焦りもあり、巻き返しを図ろうとしたのかもしれません」(大谷氏)

 しかし、結果は誤報だった。

「もちろん誤報はまずい。まずいけれど何も動かなければスクープを逃がすことになる。何もしなければ大怪我をすることはないけれど、それでは価値のある紙面は作れない。スクープを取ろうというチャレンジ精神は評価しましょう。しかし、今回は裏取りのための努力が明らかに足りておらず、Wikipediaの丸写しのような記事を書いてしまった。裏取りをするためには地検の幹部に食い込んでいなければいけませんが、そこまでの関係もなかったのかもしれません。もちろん、デスクなど上司の厳しいチェックも必要でした」(大谷氏)

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