「“資本家がズルい”と感じるなら、自分が株主になればいい」 株高で貧富の差は拡大… 「10人中3人弱しか恩恵を受けていない」
【前後編の後編/前編からの続き】
まさかの史上最高値更新である。日経平均株価が上げ潮だというのだが、相も変わらず庶民の生活は苦しいままだ。投資に流れているはずの膨大なマネーは、いったいどこへ消えてしまったのか。不可思議な日本株の高騰にまつわる「四つの深層」をお届けする。
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前編【「“日本経済が復活した”と考えるのは間違い」 日経平均“急騰”のカラクリ けん引する「四つの業界」とは】で報じた通り、日本の株価市場は“欧米頼み”なのだが、もっとも憂慮すべきは、トランプ大統領の動向である。
赤澤亮正経済再生担当相が日米関税交渉を決着させたとはいえ、今後ベッセント財務長官による四半期ごとの状況検証が行われることになっている。
「キチンと日本が米国との約束を履行しているか否か。それが果たされなければ、関税が25%に戻される可能性があるのです」
とは、ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏。
「特に私が懸念しているのは、『米国産米の輸入』と『米国車の販売』が履行されるかどうかです。それらが日本国内で売れない場合、トランプ氏が再び関税引き上げなどの強硬姿勢に出る可能性があり、いわゆる“ちゃぶ台返し”の事態も想定される。次の確定時期は11月ごろとみられていますから、投資家たちも注目しています」
もともと日本人の嗜好に合わないゆえ、米国産米やアメ車は受け入れられてこなかった。あと数カ月で劇的に需要が増える可能性はなきに等しいことを思えば、トランプ氏から再び関税を吹っかけられるという、まさに「11月危機説」が現実味を帯びてくるわけだ。
「ちょっとやそっとじゃ円高にはならない」
また一連の関税交渉では、日本が総額80兆円にも及ぶ額を、アメリカへ投融資することも決まっている。
トランプ氏がディールによる成果だとして、“すべてがアメリカ国民のために使われる”と胸を張ったのをご記憶の方も多いだろう。
再び関税の税率が変更されないためにも、日本はアメリカに“送金”の約束を果たしていくしかない。
だが、このことは決してトランプ氏にしてやられたわけではないと、マネックス証券チーフ・ストラテジストの広木隆氏は言う。
「日本だけで5500億ドル、続く韓国も3500億ドルの投融資を約束させられました。トランプ氏は“アメリカに金を持ってこい”と主張しているのです。強盗みたいなものですが、いずれにしろ日韓合わせて9000億ドルをアメリカに投資、もしくは融資をしなくてはいけないことになりました。となれば、これから確実にドルの需要が増えてきて、ちょっとやそっとじゃ円高にならない。『ドル高円安』の基調がしばらく続いていくと思います。この円安が日本企業にとっては、業績回復の一番分かりやすい要因になると思います」
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