「“資本家がズルい”と感じるなら、自分が株主になればいい」 株高で貧富の差は拡大… 「10人中3人弱しか恩恵を受けていない」

ビジネス

  • ブックマーク

「株式はインフレに強い」

 歴史的な株高にもかかわらず生活は苦しい。そんな庶民の抱く違和感は「株高不況」と呼ばれる。

 その名付け親で『株高不況』(青春新書インテリジェンス)の著者である第一生命経済研究所主席エコノミスト・藤代宏一氏は、

「スーパーで買い物をすれば、4~5年前と比べて物価は体感的に20~30%上がっていて、商品によっては倍になっていると感じる人も多いのではないでしょうか。インフレで消費者の支出は増えているのに、給料が相応に上がっているようには感じられない。株式での資産形成にまで手が回らない低所得者からすればインフレが直撃して生活が厳しい。資産を株ではなく銀行預金に回している人たちも同様です」

 日本はこれまで長年にわたりインフレとは無縁だったこともあり、株で資産を持っていない人が多いのだ。

「貯蓄から投資へ。インフレに強い資産を持ちましょう――というのは、20年以上前から言われている教科書的な教えです。実際に今回も株式がインフレに強いということが証明されました。株式を持っている人は、証券口座の残高が増えるので不況を感じにくいでしょう。賃上げは少なくても、物価上昇分は相殺できると安心しているはずです。格差拡大という話になると、やはり“資本家”が潤うだけでズルいと感じる人もいると思いますが、ならば株式投資を通じて、自分が“資本家=株主”になるという手もあります。株高の利益を享受する側になれます」(同)

「下手に株を買うなら……」

 とはいえ、株は常にリスクがつきまとう。「バブル崩壊」の言葉が経済白書に登場したのは1993年のこと。日経平均は、史上最高値を更新した89年末の3万8915円から、93年末には1万7417円と半分以下に暴落。98年に1万3000円代まで落ち込み、当時の小渕恵三首相が青果店のカブを持って“カブ上がれ”と祈ったものの回復せず、昨年まで最高値は更新しなかった。

 かような印象があるためか、株を資産として持つことに抵抗がある人が多いのは否めない事実だろう。

 経済ジャーナリストの荻原博子氏に尋ねると、

「この値上がりは、お盆休み明けにファンド・マネージャーたちが市場に戻ってきたら、一度は調整が入って普通の相場に戻るでしょう。一方でトランプ政権に不透明な動きが出れば、海外の機関投資家の資金が、割安感のある日本に流れてドーンと上がる。相場は水物なので乱高下の状態が続くでしょうから、資産形成を全面的に株に頼ってはいけません」

 下手に株を買うなら、やるべきことがあるとして、

「住宅ローンやマイカーローンがある方は、そちらを先に返済することの方が重要です。最も困るのは今より不況になった時です。まず給料が下がり、持っていた株の価格も下がる。最悪リストラされたら首が回らない。そうなった時に住宅ローンを完済できていれば住む場所は最低限確保できる。その方が堅実だと思います」

 不確かな世界で御守り代わりに株を持つ意味を、真剣に考えるべき時代となったのは間違いないのだ。

 前編【「“日本経済が復活した”と考えるのは間違い」 日経平均“急騰”のカラクリ けん引する「四つの業界」とは】では、株価の高騰をけん引する四つの業界について、専門家の解説を紹介する。

週刊新潮 2025年8月28日号掲載

特集「まさかの最高値更新4万3714円 日本株『4つの深層』」より

前へ 1 2 3 次へ

[3/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。