「“資本家がズルい”と感じるなら、自分が株主になればいい」 株高で貧富の差は拡大… 「10人中3人弱しか恩恵を受けていない」
「日本にとっては良いディールだった」
こうした市場の見通しが今回の株高につながったとして、広木氏はこう話す。
「来期の日本企業は業績が回復するだろう。だったら今、日本株を買っておこうとの投資家心理が働いた可能性は高いでしょう。トランプ氏が日本に要求した投資利益のうち9割は、アメリカが得ることになっていますが、実際のところ投資額は5500億ドルの1割に過ぎません。残りは融資と融資保証です。融資とは単に資金を貸すわけではなく利息をもらえる。日本からアメリカへの投融資ではいったん円をドルに換えることになるので、ここでも円安効果が生まれます。それに加えて、融資分に関しては利息をつけて返してくれるので、日本にとっては良いディールだったと思うのです」
とはいえ、少なくともトランプ政権が続く限り、日本経済は綱渡り状態が続く。
その元凶は、なりふり構わぬ自国優先主義を打ち出し、世界経済を混乱に陥れているトランプ氏である。
「いわゆる“トランプ現象”が生まれた背景は、日本と同じくアメリカ国内で格差が拡大していることです。イーロン・マスクやザッカーバーグのような起業家が巨万の富を手にするとともに、一部の成功したエンジニアやデータサイエンティストたちも高給をもらう。そこから取り残されたラストベルトの白人労働者たちの怒りが、トランプ氏を支持し続けているのです」(同)
「株価上昇の恩恵を受けているのは、ごく一部」
日本も同様、今回の株高の恩恵を被っているのは、まさに一握りの人間しかいないのではないだろうか。
「今回の株高で分かったことは、持つ者と持たざる者の格差がより明確になった点です」
とは、前出の深野氏だ。
「日本で株価上昇の恩恵を受けているのは、ごく一部の人々に限られます。現在NISA口座を開設している方は、満18歳以上の有資格者が約1億人いる中で、わずか2700万~2800万人前後。端的に言えば、10人中3人弱しか株高の恩恵を被っていない。本来は株価が上がれば、資産が増えて消費に回る好循環が期待されます。『資産効果』と呼ばれますが、日本は大多数の国民が株を持たず効果が限定的なのです」
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