150万人規模のデータ分析でリスクが指摘 「マイクロプラスチック」由来の“有害添加剤”が健康に及ぼす影響とは

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 プラスチックによる環境汚染を防ぐため国際的な議論が高まっている。8月5日より行われた「プラスチック条約」策定に向けた国際会議で焦点になったのは“生産量の規制”を盛り込むかどうかだった。EUや太平洋の島しょ国は生産量規制に積極的な一方、プラスチック原料となる石油の産出国からは反対の声も根強く、結局合意には至らなかった。各国の足並みが揃わない中、研究によりプラスチック製品の影響は明らかになりつつある。自然環境中に放出されたプラスチックは細片化して「マイクロプラスチック」として、心臓や肺をはじめ人体にも取り込まれ、最新の研究では健康への影響も示唆されているというのだ。マイクロプラスチック研究の第一人者である東京農工大学の高田秀重名誉教授に研究の最新動向を聞いた。

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 ペットボトルや包装容器、化学繊維、タイヤなど、日常のありとあらゆる場面でプラスチックは使用されています。世界では年間約4億トン以上ものプラスチックが生産されており、これは原料の石油に換算すると産出量の8~10%に上ります。

 プラスチックは紫外線を浴びることや物理的な衝撃によって劣化していき、細かな欠片に砕かれていく。結果、5㎜以下になったものが「マイクロプラスチック」です。世界で年間170万トンのプラスチックが廃棄物処理をもれ環境中に放出されていると言われており、これにより世界中の海洋や河川、土壌、大気中からマイクロプラスチックが見つかっています。

 人間の生活とプラスチックが切っても切れない関係である以上、東京や大阪など人口の多い都市域ほど、環境中に放出されるプラスチック量は多い傾向にあります。東京理科大学の研究チームによると、多摩川水系では年間約72トン、淀川水系では年間約92トンのプラスチックごみが河川清掃活動で回収されています。

 マイクロプラスチックが検出されるのは何も環境中に限った話ではありません。肺、胎盤、心臓など、ヒトの体内のほぼすべての臓器や血液中からマイクロプラスチックが見つかっているのです。人体にプラスチックが取り込まれる経路としては、例えば、プラスチック食器で食事をとった際に食器の微細な小片が体内に入ることや、河川・海洋環境中のプラスチックを取り込んだ魚介類を食べることが挙げられます。これ以外に、大気中や飲料水中でもマイクロプラスチックの検出例があるため、ここを経由して人体に取り込まれていることもあり得ます。

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