JR東日本「豪華寝台特急」のクルーが乗客用の“シャンパン”を飲んで「運休」に…“フラッグシップ”でトラブルが相次ぐ理由とは
接客している人の給料が低い
――四季島のスタッフの飲酒はなぜ起きたと考えられるか。
H:運転を担う仕事以外は、飲酒に対して甘い社風があるためだと思います。鉄道会社はどこもそうだと思いますが、仕事終わりの飲み会なども多く、体育会系の風土があるためです。
国鉄時代は、運転士が勤務中に飲酒を行ったせいで、引き起こされた事故が何件もありました。今回は、子会社のJR東日本びゅうツーリズム&セールスのスタッフが起こしたトラブルです。とはいえ、仕事中に飲酒してしまう問題は、少なくとも令和になってからは聞かなかったため、かなり驚いています。
――JR東日本びゅうツーリズム&セールスの採用情報のページを見ると、新卒採用で総合職の基本給が21万円、エリア職の基礎給が17万円とある。四季島のスタッフの給料がいくらなのかは不明だが、この基本給を見ると決して高いとは思えない。不祥事を起こしたのは給料が安いからではないか、という意見もある。
H:給料の安さが不祥事につながったかどうかは断定できませんが、「あの列車に乗って接客している人たちって、そんなに給料低かったの?」というのが率直な感想です。なお、車掌はこの列車のために作られた“四季島運輸区”に所属する、当社でもエース級の社員が乗車しています。
――飲酒を行ったスタッフを乗務から外したら、列車が運休になってしまった。現場は人が足りないのか。
H:駅の話をすると、現場に求められることが年々増えている割に人員配置は増えないので、確かに人手不足は否めません。ただ、うちの職場については、今年は4月に配置される新入社員が昨年より増えたので、やや潤いつつありますね。今年はしっかりとお盆休みをいただき、実家に帰ることができましたので。
乗務員も設備系も人手が足りない
――乗務員の現場はどうなっているのか。
H:周りの乗務員に聞いた感じでは、厳しい話が聞かれます。最近、鉄道ファンの方が「赤帽の乗務員がいた!」とSNS投稿しているのを見かけます。赤帽とは管理職のことです。一般社員だけでは人手が足りず、現場が回らないので、穴埋めとして乗っているのです。
一般社員の中には「社員が有休を取れないのは管理する側の責任だから、管理職が乗るべき」という意見もありますが、それもなんだか、かわいそうだなと思います。ただ、管理職に判断を仰ぎたい事案が発生した際、同僚から「〇〇副長なら、今日は臨時行路乗っているよ」と言われると、他の事務系の仕事が進まなくなってしまい、困ってしまいますが……。
――工事や保線などの現場はどうなっているのか。
H:設備系の社員は、相変わらず業務量がえげつないそうです。配偶者が設備系で、小さいお子さんがいる先輩は、「旦那がぜんぜん帰ってこない! 私が短時間勤務とはいえ……、ほぼワンオペ育児、キツいわ!」と怒っています。
――コストカットを上が求めていると感じることはあるか。
H:時計の撤去や時刻表やチケット入れの配布の取りやめといった、お客さまに見えるところはもちろんですが、小さなところでは切符の申込用紙なども送付してもらえなくなりましたね。これまでは発注すれば届いていたのですが、今後はそれぞれの職場で印刷してくださいとの通達があり、余計に手間が増えました。
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