米国マクドナルドはなぜ値下げを決断したのか 値上げラッシュの米国でなぜか「デフレリスク」浮上、株式市場も大荒れか

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AI失業の不安、圧し掛かる学生ローン

 AI失業は若者にとって現実となりつつある。

 ニューヨーク連銀のデータによれば、大卒以上の22~27歳人口の4月の失業率は5.8%と全体の4.0%より1.8ポイント高く、その差は過去最大となった。専門家は「AIが新入社員の仕事を代替するようになっていることが影響している」と分析している。

「弱り目に祟り目」ではないが、大卒の若者にとっては学生ローンも頭の痛い問題だ。

 トランプ政権が学生ローンの返済猶予措置を終了させたため、返済が滞る件数が急増している。ニューヨーク連銀は「学生ローン全体の残高は1兆6400億ドル(約243兆円)に上り、そのうち12.9%が90日以上延滞している」とみている。

 家計のやりくりに窮した若者は、新たな金融サービスに頼らざるを得ない。

 BNPL(バイ・ナウ・ペイ・レイターの略)と呼ばれる決済サービスを使い、あらゆる買い物の支払いを先延ばしにしている。BNPLを使った商品やサービスの購入額は昨年、約1090億ドル(約16兆円)と急増し、支払いの遅延問題が既に顕在化している。

 消費性向(消費の所得に対する割合)が高い若者が苦境に陥ると、個人消費に悪影響を与えることは間違いないだろう。

米マクドナルドが値下げを断行する理由

 消費者の懐事情の悪化は小売り大手の経営を圧迫しつつある。

 米小売り大手ターゲットは20日、コーネルCEO(最高経営責任者)が来年2月に辞任すると発表した。3四半期連続の減収の責任をとる形だ。インフレの長期化で消費者の節約志向が強まり、最大手ウォルマートも第2四半期の純利益が3年ぶりに予想を下回った。

 注目すべきは、マクドナルドが主力商品の値下げを決定したことだ。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、ビッグマックなどのセットメニューの価格を9月から約15%引き下げると報じた。

 マクドナルドはこれまで、インフレによるコスト高に合わせて値上げを続けてきたが、消費者から「高すぎる」との声が高まり、深刻な客離れが懸念された。このため、利益が圧迫されることを覚悟の上で値下げを断行しようとしている。

 物価はたしかに上がっている。だが、値上げにより消費者がモノを買えなくなり、支出を減らすことによる物価の下押し圧力は、徐々に高まっているのだ。

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