「あのちゃん」はなぜ、止まらないのか 「奇抜キャラ」「不思議ちゃん」が今やトップアーティスト

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テレビに欠かせない存在

 アーティスト・タレントのあの(通称「あのちゃん」、アーティスト名は「ano」)の勢いが止まらない。バラエティ番組やCMへの出演は相変わらず途切れることがなく、テレビで毎日のように見かける存在となっている一方、音楽活動も一段と本格的になっている。【ラリー遠田/お笑い評論家】

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 6月4日には2枚目のフルアルバム「BONE BORN BOMB」がリリースされ、9月3日には初の武道館公演を控えるなど、アーティストとしての実績も確実に積み重ねている。かつては「奇抜なキャラの女の子」という認識で語られることが多かったが、今では1人の表現者として注目を浴びる段階に入りつつある。

 テレビの世界に進出した当初、あのはつかみどころのない「不思議ちゃん」という印象が先行していた。予測不能な言動や独特の間合いによって、共演者や視聴者を戸惑わせながらも惹きつけるキャラクター性が話題を呼び、瞬く間に個性派タレントとしての地位を築いた。

 しかし、彼女はただの「変わり者」として消費されることはなかった。ぶれない芯を持ちながらも、番組の空気を読み、的確にコメントをすることもできるようになった。今ではその場を独特の雰囲気で包み込むだけではなく、番組全体を活性化させる存在として、バラエティ界に欠かせない人物になっている。

 アーティストとしての彼女の出世作となったのは2022年にリリースされた「ちゅ、多様性。」という楽曲である。アニメ「チェンソーマン」第7話のエンディング曲として使われたこの作品は、彼女らしい毒気のあるポップな世界観を提示した傑作だった。

 楽曲そのものが大ヒットを記録しただけではなく、「ゲロチューダンス」と呼ばれる振り付けも話題になり、TikTokなどで広く拡散された。2023年には「NHK紅白歌合戦」に出場して同曲を披露した。

 その後も「スマイルあげない」「絶絶絶絶対聖域」「許婚っきゅん」などアニメソングやタイアップの話題作を次々と担当し、ポップでありながらも個性的でとがったセンスを示すことで、アーティストとしての地位を強固なものにしていった。

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