「ビジターゲームでも主役は大谷」がアダになる? “活躍して当然”の空気がMVP争いに落とす影とは
大谷以外の注目株は?
大谷中心の報道はエンゼル・スタジアムだけではない。エンゼルス戦の前々カードであるカージナルスとの3連戦中のこと。メジャーリーグ専門放送局「MLB Network」は80年代のスター選手だったハロルド・レイノルズ氏(64)と通算152勝を挙げたジェイク・ピービー氏(44)をゲストに招き、野球談義に花を咲かせた。
「カージナルスとの3連戦では投手・大谷が先発登板もしているので、その話題は避けられませんでした」(現地記者)
内野手だったレイノルズ氏が登場した後も、長打を放った大谷のタフネスさを語れば、投手出身のピービー氏は「前日に打者出場した疲れを全く感じさせない投球だった」と絶賛した。司会者は「カージナルスが勝った日にドジャースの大谷の話をするなんて」と笑いを誘ってひと呼吸を置いたが、カメラに向かってこう訴えた。
「Gotten used to SHOHEI? ファンとしての情熱を再び燃やす必要がある。私たちが目撃しているのは3連戦を戦った全選手のなかでもっとも才能のある男なのだから」
レイノルズ氏も「今、二度と見られないものを見ているんだ」と続けた。
ビジターゲームでも、勝敗に関係なく、野球ニュースの主役は大谷。主役たる理由は往年のスター選手たちの主張する通りではあるが、それがかえってアダとなる危険性も囁かれている。
「ペナントレースも佳境を向かえ、ポストシーズンマッチ進出の可能性を持ったチームの今後や、MVPの予想記事も多くなりました。順当に行けば、ナ・リーグは大谷。受賞が決まれば、エンゼルス時代の23年からリーグを跨いで3年連続となります。でも、投票権を持った野球記者たちは『他の記者も大谷を1位に投票する』空気を察しています。そのせいか、奇を衒った一票や、玄人好みのする大谷以外の選手を選んでくる危険性も囁かれているのです」(前出・同)
実際、「打って当然、活躍して当たり前の大谷」を蹴落とし、票を集めそうな新星もナ・リーグにはいるのだ。カブスで鈴木誠也(31)をDHに追いやった攻守のスタープレーヤー、ピート・クロウ=アームストロング(23)だ。
「カブスは後半戦に失速し、また持ち返してきた感じ。このチームの浮き沈むに大きく影響していたのが、主砲のカイル・タッカー(28)とクロウ=アームストロングです」(前出・米国人ライター)
カブスは現地時間8月18日の首位攻防4連戦の初戦となるブルワーズ戦を落とし、70勝54敗。その差は「9」と開いたが、前カードのパイレーツ戦では勝ち越している。その上昇気運にオフのMVP予想を絡め、カブスを応援する地元メディア「Cubbies Crib」はこう伝えていた。
「PCA(クロウ=アームストロング)も8月に入って極度の不振に陥っていた。8月に入って、打率は1割3部3厘、出塁率も2割4厘と苦しんでいた。だが、直近6試合で打率3割1分6厘(19打数6安打)の成績を残しており、同6試合で打率9分5厘と低迷しながらも、16日のパイレーツ戦では2安打を放ったタッカーがこのまま復調してくれたら好機到来だ」
鈴木は好不調の波が小さく、コンスタントに活躍している。日本のファンからすれば、鈴木の安定した活躍はもっと評価されるべきだと思うが、同メディアは、
「ブルワーズの快進撃で地区優勝は遠のきつつあるが、ワイルドカードから勝ち上がり、10月まで戦うためには、この2人のスター外野手が打線をけん引することが不可欠だ。とくにPCA」
と伝えていた。クロウ=アームストロングが打てば勝てる、という論調だ。カブスがワイルドカードから勝ち上がり、ドジャースに代わってワールドシリーズに進出した場合、クロウ=アームストロングにMVPの投票が流れる可能性は高い。
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