「最近、マルトクがおとなしい」…“森本検察”に「秋の陣」はあるか 巨悪を眠らせない「最強の捜査機関」不気味な沈黙の意味とは

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陰の特捜部長として

 早くから将来の「国交相」や「党代表」とささやかれ「公明党のホープ」とうたわれながら、コロナ期間中に銀座の高級クラブで飲食していた事が報じられ、資金管理団体が不適切な飲食費を政治資金から出していたことが発覚し、議員辞職した遠山清彦元衆院議員(56)。辞職後に判明した貸金業法違反事件で、特捜部は同元議員を在宅起訴した(2021年)。この際は「水に落ちた犬は容赦なく叩くのが東京地検特捜部流」と、一部の与党関係者から捜査を揶揄する声も漏れた。

 だが、菅原一秀元経産相(63)の公選法違反事件(2020年)では、菅原氏を不起訴としたが、21年2月の検察審査会による「起訴相当」議決を受けて略式起訴に切り替えた。また政治資金の不正報道で議員辞職に追い込まれた薗浦健太郎元衆院議員(53)も、収支報告書に記載していなかった金額が4900万円に上ったものの、政治資金規正法違反罪は略式起訴にとどまった。

 前出の弁護士は「略式起訴は罰金刑にとどまる軽微な犯罪を問うための正当な手続きですが、政治家の略式起訴は衆人環視の法廷に引っ張り出さないという『特別待遇だ』と皮肉る声があることも事実です」と打ち明ける。

 歴史に残る大型疑獄事件になる可能性もささやかれた自民党の派閥裏金事件も、国会議員の逮捕は池田佳隆元衆院議員(59)ただ1人。参院議員1人が在宅起訴され、元衆院議員2人は略式起訴されただけとなった。ただ、結果的には本丸とみられた旧安倍派のカネの流れがウヤムヤとなったことで、自民党は選挙で続けて大敗。衆参ともに少数与党となったのは周知のとおり。

 その一方で旧民主党、みんなの党、維新の前身の一つとなった維新の党、都民ファーストの会が国政進出する過程で結成された希望の党と渡り歩いた末に自民党入りし、弱小派閥の谷垣グループに加わった“日和見”の柿沢未途元衆院議員(54)は、江東区長選の選挙違反事件で逮捕された。

 政界事件では“落としどころ”を探って捜査を行っているとのうがった見方もできそうな状態に、別の検察関係者はこんな疑問を口にする。

「特捜部は自公政権に配慮しているとさえ思える。積極的に捜査に口を挟んでいたはずの森本氏“らしさ”が全く感じられないのが不思議だ」

 森本氏は2024年7月に法務省刑事局長となり、国会内外で政治家に説明を求められる立場となったが「思った以上にそつなくこなしていた」というのが省内での森本評。先月、法務事務次官となったことで次官、東京高検検事長、検事総長と続く、検察内での出世ルートに完全に乗ったというのが衆目の一致するところだ。

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