関西万博を訪れたITジャーナリストが“未来社会”のイメージを見い出せなかった根本的な理由…「VR映像はもはや未来の技術ではない」

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バーレーンなのにアジア系

 ベルギー館には、伝統文化であるガラス加工品や木工製品、レンガのように広く使われてきた石材が展示されていて興味を惹かれたのだが、簡単な説明書きしか案内がなく、質問しようにもスタッフが近くにいない。館内で作業をしたり、行き来したりしているスタッフは、ひたすらビールを飲んでいけとしか言わなかった。バーレーン館では、黒髪のいかにも東洋人顔の男性が案内役として出てきた。

「コレカラノ、ミナサンニ、バーレーンデノ、ブンカノ、ゴショカイ、シマス」

 明らかにバーレーンの人ではなく、中東の人でもなく、アジア系だが日本人でもない。たどたどしい日本語を話すアジア系外国人に、誰がバーレーンのことを教えてもらいたいと思うだろうか。それなら、日本語のWikipediaを読んだほうが、よほどスッキリするのではないか。いろいろと面倒くさくなり、ざっと流し見てパビリオンを出た。

 コロンビア館とバーレーン館を出た先にトイレがあり、給水機もあった。リング上のものとはマシンが違ったので飲んでみたが、やはり不味い。見たことのない化学物質か薬剤でも含まれているのか、と疑うような不思議な味わいだ。

 所在なくウロウロとしているうち、ガンダム像の前に出た。アジア系外国人の人だかりができていたが、これは新規に製作したものではなく、もともと横浜で展示されていたのを持ってきて組み上げ直しただけだ。

なぜ日本で万博を開催したのか

 別に組み直しでもいいのだが、ファーストガンダムの放映は1979年。つまり、メカはもちろん世界観を含めて70年代の「デザイン」であり、「命輝く未来社会のデザイン」として2025年に展示するのに相応しいのか。我が国の未来観は50年ほど進化しておりません、と言っているのも同然なのではないかと思う。

 さらにウロウロして、リング下にある大型のゴミ捨て場近くに給水機を見つける。三度目の正直とばかりに、空いたペットボトルに半分ほど詰めて飲んでみた。少し冷たく、口当たりはマシだったが喉越しは悪い。というか、不味い。飲み込んでも大丈夫かと心配になる不味さ。

 先ほど見かけた自販機の水が全数売り切れていたのは、やはり多くの人が給水機の水が不味いと思っているからなのではないか。この分ではコンビニの水も売り切れているに違いない──いや、もうどうでもエエわ。

 70年の万博で、太陽の塔が来場者に想起させた輝かしい未来は、どこ行ってしまったのだろう。それは、圧の強さが許容された昭和の価値観であり、何事にもマイルドな令和では通用しませんと言われれば、それはそうなのかもしれない。現在の日本には輝かしい未来をつくりあげるだけの力がありません、という向きもあるかもしれない。だったらなぜ、そんな日本で万博を開催したのかとも思う。

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