物件価格が伸び悩む都内「高級住宅街」の実名 弱点から“残債割れ”回避のヒントを学ぶ【“沸騰”不動産の対処術】
かつて芸能人が多く住んでいた高級住宅街にも値下がりの波が
“駅から遠い”という今のトレンドと逆行すること。空き家が多数あり供給過多の傾向にあること。物件価格の値下がりが起きやすい2つの要素が混在するのが今の世田谷区なのだという。
「売らなきゃいけない不動産が多いエリアは相対的にどうしても価格が下がってしまいます」(山本氏)
それは、有名な高級住宅街も例外ではない。
「例えば、かつては芸能人も多く住んでいて、高級住宅街と知られる岡本は、二子玉川駅から歩いて25分程度と最寄り駅から遠いことがネックになり、今は在庫が少し増えてきてしまっています。高台にあり川から離れていて、水害リスクが低く安心なことが売りの1つなのですが、やはり駅からの距離が懸念事項に捉えられているようです」(同)
同様に二子玉川エリアの鎌田アドレスや、成城学園前エリアの喜多見アドレスの一部も、駅までの移動手段がバス便であることがネックになり、物件価格低迷の要因になっているのだという。
「目黒区の高級住宅街として知られる柿の木坂などにも、実は駅から遠い物件がある。今はブランドネームが勝っているため値下がりは見られませんが、これから先、人口が減った時にどうなるかの懸念要素はあります。同じく面積が広い練馬区でも、大泉学園の周囲には駅距離のある物件が多く、価格低迷の要因になっています」(同)
ただ、都心にある“陸の孤島”エリアは、今後も値下がりを免れる確率が高いそうだ。
「港区の南青山や西麻布の一部エリア、世田谷区では三宿なども駅距離がある物件はありますが、都心では路線の“網の目”が細かくなるため、むしろ複数路線を使用できるメリットになることも。三宿も駅までは少し歩きますが、ひとたびタクシーに乗ってしまえば渋谷まで10分ほどで着いてしまいますからね」(同)
高級住宅街ならではの“ルール”がネックに
それでは、これから世田谷区の物件を買う場合、どのような点に注意すれば良いのだろうか。
「戸建てもマンションも、駅から徒歩15分を超えてくると黄色信号です。外観や間取り、周囲の環境などが気に入って“終の棲家”にするのであればいいのですが、リセールを念頭に考えると売却額がローンの残債を下回る“残債割れ”のリスクが高くなってしまいます」(山本氏)
高級住宅街ならではの“ルール”がネックとなる場合も。
「大田区の田園調布が有名ですが、あのエリア一帯は“田園調布憲章”によって建築条件に厳しい規制が敷かれています。例えば大きなお屋敷を売却するとなった際、その土地を分割して売ることができなかったりします。何億も払える買い手が見つかればいいのですが、そんな額を払えない人にとっては、土地の面積を小さく切り売りして住みたいというニーズもあります。そうしたルールがあると、街並みは綺麗に保てる反面、流動性を持たせて不動産価格を維持していく上ではマイナスになることもあります。3億なら3億で、買いたいという人が現れるまではずっと待ち続けることになってしまいます」(同)
これから人口減少が進む日本では、“駅遠物件”がますます見向きもされなくなる一方で、限られた“駅近物件”を巡る争奪戦がヒートアップするという“二極化”がますます進むことが予想されるという。
「長らく続く職住近接のトレンドを踏まえて、1分でも2分でも、なるべく駅からの距離が近い物件を選ぶことが、住宅購入のリスクを軽減することに繋がるのです」(同)
***
〈【【“沸騰”不動産の対処術】都内で北千住・浅草が急上昇の謎…「の」の字の法則で読み解く値上がりエリアの「実名」と不動産選びの「新常識」】では、都内の不動産価格で起きている“西低東高”の傾向について、不動産業界で受け継がれる“ある定説”を元にした深読み解説をお届けする。不動産“沸騰”時代の住まい選びに欠かせない“新常識”とは――。〉
[2/2ページ]


